RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ファルコン・レイク@TOHOシネマズ日本橋 2023年8月26日(土)

封切り二日目。

席数143の【SCREEN9】の入りは八割ほど。

 

 

最終盤までは「ひと夏の経験」の王道を行くもの。

数年振りに逢った、母の友人の娘は美しく成長。
僅かに二歳の年齢差ではあるものの、
十代後半のこの違いは大きい。

主人公の『バスティアン(ジョゼフ・アンジェル)』は
年上の『クロエ(サラ・モンプチ)』を改めて意識し、
仄かな恋心を抱く。

一方の彼女はと言えば、少々ツンデレ
彼に気のあるそぶりを見せたかと思えば、
地元の男の子たちとも交流する。

そんな『クロエ』を見れば
バスティアン』の心は千々に乱れ、
思わず見栄を張ってしまうのは、
同性であれば理解もできること。

とは言え、彼女にしてみれば、
許容を越えているわけで・・・・。


二人の交流は
時に無邪気、ある時はエロチック。

当初は姉弟のような関係だったものが、
次第に大人びたものに熟成する。

それは見ていて微笑ましくもあり、
まだるっこしくもあり。

いや、年頃の男子なら
誰もが夢想するエピソードの数々ではある。


が、そこに、不協和音のように挟み込まれる「死」のイメージ。

タイトルにもなっている湖に「幽霊」が出るとの噂は、
実は『クロエ』の中でのみ完結しており、
ニュースにもなってはいないし、他の誰もが知ってはいない。

二人は「幽霊」をモチーフに動画を撮り楽しむが、
それは怯えへの裏返しであるよう。

こびりつき、剥がれることはない。


舞台はカナダのケベック州の美しい湖と
湖畔のコテージ。

周囲には自然が息づき、
鳥や獣の声、風雨の音がBGMのように画面を織りなす。


自身の理解者として、彼に傍に居て欲しい『クロエ』と
それを望む『バスティアン』。

最後のシークエンスは、
まさにその捻じれた体現なのだが。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


長編とはいえ、100分ほどの尺で描かれるのは
パリからやって来た一家と、地元に住まう一家の真夏のバカンス。

似たようなシチュエーションや経験は、
おそらく誰しもが持っているであろう、
ただ、ほとんどは一過性のもの。

本作ではそれが
永遠になった一つの結実が、悲しい過程を経て語られる。