封切り二日目。
席数143の【SCREEN9】の入りは八割ほど。
最終盤までは「ひと夏の経験」の王道を行くもの。
数年振りに逢った、母の友人の娘は美しく成長。
僅かに二歳の年齢差ではあるものの、
十代後半のこの違いは大きい。
主人公の『バスティアン(ジョゼフ・アンジェル)』は
年上の『クロエ(サラ・モンプチ)』を改めて意識し、
仄かな恋心を抱く。
一方の彼女はと言えば、少々ツンデレ。
彼に気のあるそぶりを見せたかと思えば、
地元の男の子たちとも交流する。
そんな『クロエ』を見れば
『バスティアン』の心は千々に乱れ、
思わず見栄を張ってしまうのは、
同性であれば理解もできること。
とは言え、彼女にしてみれば、
許容を越えているわけで・・・・。
二人の交流は
時に無邪気、ある時はエロチック。
当初は姉弟のような関係だったものが、
次第に大人びたものに熟成する。
それは見ていて微笑ましくもあり、
まだるっこしくもあり。
いや、年頃の男子なら
誰もが夢想するエピソードの数々ではある。
が、そこに、不協和音のように挟み込まれる「死」のイメージ。
タイトルにもなっている湖に「幽霊」が出るとの噂は、
実は『クロエ』の中でのみ完結しており、
ニュースにもなってはいないし、他の誰もが知ってはいない。
二人は「幽霊」をモチーフに動画を撮り楽しむが、
それは怯えへの裏返しであるよう。
こびりつき、剥がれることはない。
舞台はカナダのケベック州の美しい湖と
湖畔のコテージ。
周囲には自然が息づき、
鳥や獣の声、風雨の音がBGMのように画面を織りなす。
自身の理解者として、彼に傍に居て欲しい『クロエ』と
それを望む『バスティアン』。
最後のシークエンスは、
まさにその捻じれた体現なのだが。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
長編とはいえ、100分ほどの尺で描かれるのは
パリからやって来た一家と、地元に住まう一家の真夏のバカンス。
似たようなシチュエーションや経験は、
おそらく誰しもが持っているであろう、
ただ、ほとんどは一過性のもの。
本作ではそれが
永遠になった一つの結実が、悲しい過程を経て語られる。