RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

水は海に向かって流れる@109シネマズ川崎 2023年6月10日(土)

封切り二日目。

席数89の【シアター8】の入りは五割ほど。

 

 

田島列島』の原作は既読。
ついでに言えば〔子供はわかってあげない〕も〔ごあいさつ〕も読んでおり。

映画版の〔子供はわかってあげない(2021年)〕は
「WOWOW」で観ているが、
元教祖の『藁谷友充(豊川悦司)』が教団を離れることになったエピソードが
尺の関係もあろうが、
まるっと抜けていたことがかなり不満。

探偵の『門司明大(千葉雄大)』の活躍が描かれる部分でもあり、
あまりに惜しい構成。

結果としてはアリだったものの、
青春ラブストリーの側面が濃くなり過ぎ
ドラマとしての物足りなさを感じた。


今回の原作は更にだいぶんの全三巻(前作は上下二巻)。
切り方・纏め方によっては目も当てられない状態になるなと危惧していれば、
その心配の半分は的中。

衝動的な思いが強く出て、
その背景が薄っぺらい{ボーイミーツガール}になってしまっていた。


『榊千紗』役の『広瀬すず』は、
実年齢二十四歳なので、ほぼキャラクターとは等身大。
もうこんな役柄を演じるようになったのね、と
ちょっと感動。

『茂道』を演じた『高良健吾』は
まるっきりミスキャストとしか思えず、
何故このような起用をしたのか。
『田島』作品の特徴である
会話の妙による笑いをバッサリと削っており
それならばアリとの判断か。

『直達』の『大西利空』は
何をかいわんやのレベル。
これも原作で多用されるモノローグを全て削っているので
なんとか成立している状態。
当然その分、主人公の心の動きが掴み辛くなるわけで
本来的には心中の喜怒哀楽が次第に強くならねばならぬのに
最後まで平板。

 

鑑賞を前に改めて読み直せば、
一回り近い歳の差を越えて二人が惹かれ合うためには、
それなりの流れやいきさつが必要。

漫画でも複数回を読み返さないとそれは納得が行かないのに、
ここでは相当を端折ってしまっているために
唐突さしか感じない。

『直達』に想いを寄せる『楓(當真あみ)』の心象の変化もそれは同様。
もっと細やかにふれてあげないと。


他方では、一コマの中でのちょっとした仕草を
きちんとカットに落とし込む丁寧さは存在。

伏線とまではいかぬものの、
後で反芻すれば
なるほどと感じるシーンが随所に見られるのは嬉しい。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


千葉雄大』がカメオ出演するかと期待したが、
結局は肩透かし。

唯一、封筒に印刷された探偵事務所の名称がアップになるだけの処理は
なんとも残念。
殆どの人は、何の意味か理解できなかったろう。