封切り三日目。
席数172の【シアター4】の入りは七割ほど。
主演作品としては2008年の〔接吻〕だが、
彼女にとってのメルクマークとなったのは2011年の〔八日目の蝉〕と確信。
助演ではあるものの、この人いつからこんなに上手くなったんだろうと
随分と驚かされた記憶。
そして当該作と同じ『成島出』監督の起用に応え
本作でもはじけた演技を披露、
しっかりと記憶に残る一本に仕上げた。
誰のハナシかと言えば勿論『小池栄子』その人。
先に舞台版でも同役を務めたとのことだが
映画化された中でも自家薬籠中とした『永井キヌ子』の
かつぎやで凄い美人との特異なキャラクターを存分に演じ切っている。
まさしく、余人をもって代えがたい。
元々『大泉洋』は、ちょっと気が弱いとぼけた性格の役柄でコメディをやらせれば
現時点の役者さんの中ではピカ一。
それに、しっかりとしたガタイに派手な目鼻立ちの『小池』がダミ声で絡むことで
可笑しさは倍増。
体格の良さを生かしたシーンも幾つかあり、
最初から最後まで笑いが止まらないのは
主演の二人が両輪となり交互に楽しませてくれるから。
いやもう最強のペアである。
大本の原作は『太宰治』の未完の遺作。
妻子と離れて暮らす『田島周二』が、女房子供を呼び寄せるのに、
気ままな一人暮らしの間にできた十人ほどの愛人と縁を切るため、
絶世の美女を偽りの妻に仕立て、愛人達の元をおとなうという奇想の物語り。
筋立てからしてファンタジーだし(もっとも主人公の造形は
『太宰』自身を投影している側面もあるだろうから、女性の方から勝手によって来る
とのキャラクターはあながち外れてはいないかも)、
その後に起きる珍奇な騒動は十二分に想定が付く。
期待をまるっきり裏切らないてんやわんやが繰り広げられ、
しかし最後に辿り着いたのは、ちょっとほろっとする結末。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
愛人と手を切るなどは、現実の場面ではかなりの修羅場も、
そのことを微塵も感じさせない軽い演出。
「グッドバイ」と言っても言われても、目的を達したことにはなりつつ、
男たるもの自分から切り出す科白としたいのは世の常。
それが叶わなかった時の『大泉』の表情がまた
なんとも言えず味がある。