封切り二日目。
席数118の【シアター3】の入りは五割ほど。
『ティモシー・シャラメ』目当ての女性客が多いかと思いきや、
半数以上が男性との構成はやや意外。
今回の「同族」は一風変わった特徴を持つ。
ただ大括りでは「カンニバリズム」に分類して良いか。
ここでの「人喰」は〔東京喰種トーキョーグール〕の「喰種」のように
人を食べねば自身が生きて行けぬわけではない。
普段の食事は常人と変わらず、ただ時として
人を喰べる欲求に突き動かされ
夢遊のように行為に至る。
それは性衝動にも似ているのだろうか。
なので、そのサイクルにも決まったパターンは無い様子。
数年喰べずにいても平気なのに、突然に短いスパンでの多喰を繰り返したり、と。
また遺伝の要素を色濃く描いているのも象徴的。
父から息子へ、母から娘へと伝わるとも。
しかし、その親子間でも喰欲の対象とはなり
一般的な愛情が必ずしも欲求への阻害になるとは限らぬよう。
中には「同族」は喰べぬとの、誓い?を立てる例も有るようだが。
とは言え、妻或いは夫を手に掛けることはないらしく、
これは親子の情よりも夫婦のそれが勝るとの示唆だろうか。
次第に明らかになる
そうした複雑な設定を背景に、展開されるのは
あまりにも悲しい濃密な愛のかたち。
世間には受け入れられぬ少数者が身を寄せ合う。
一つ所に長々と居ることはできず、
仲間のコトは匂いで探知はできるものの、
積極的にはかかわろうとはしない。
家族の中でも自分だけが異端のケースもアリで
距離感を保つことすら困難。
望んでこのように生まれた訳ではないのに、
切な過ぎる身上が涙を誘う。
そんななか、一組の若い男女が米国内を旅する{ロード・ムービー}。
唯一変わっているのは、金品と移動の為の足の入手、
そして一番大事な喰う欲望を満たすための手段が
人間の捕食である点だけ。
その大枠さえ外してしまえば、
よくある{メロドラマ}とさほどの違いはなし。
とは言え最後の最後まで、その設定が存分に発揮されているのだが。
旅の目的が達成された結果はあまりに衝撃的。
しかしここまでは実は序章にしか過ぎず。
終章に向け、更に心をかき乱す流れが待ち受けている。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
『高橋留美子』の〔人魚〕シリーズや
〔ぼくのエリ 200歳の少女(2008年)〕でも描かれた
先が見えない、虚無感に縁どられた未来。
とりわけ後者とは、最終的な愛のカタチも近似しており。