RollingStoneGathersNoMoss文化部

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2023年度 武蔵野美術大学大学院修士課程日本画コース修了制作展@佐藤美術館 2024年3月23日(土)

 

出展者は十三名。

『オウテンテン』と『熊谷衣瑠菜』の作品を面白く観る。
共に二点づつが並んでいる。


前者は〔夏浅し風のかげそふ蝶のかげ〕と〔凌霄花の庭〕。

中央には幼げに見える人が独りで大きく描かれ
翅の文様も大きさも様々な蝶が幾頭も、
更には極彩色の金魚まで。

それらは何れも
嘗て主人公の周りを彩った生き物なのだろうか。


後者は〔きょうはいい日/なんでもない日〕と〔交差する〕。

画面の中には小さく描かれた人が幾人も。
表情は描かれてはいないが
外見や服装からは色々と見えて来るものがある。

その中の何人かには吉日、何人かには平日、
言及されてはいないものの凶日の人もいるだろう。

しかし誰にとっても、一日は同じ長さで過ぎて行く。


会期は明日が最終日。


が、自分の訪問時の他の来場者の姿は二人のみと、少々寂しい。

 

 

千賀健史個展「まず、自分でやってみる。」@BUG/リクルートアートセンター 2024年3月17日(日)

 

『千賀健史』は「2017年 第16回写真「1_WALL」」グランプリ受賞者。

その時の作品は階層社会や差別・貧困をテーマも
本展では「特殊詐欺」を取り上げる。

壁に架けられた幾つもの作品は
解説も読まなければ理解は不能も、
見ただけで単純に理解できるのは床面に描かれた「双六」。

これはアプリを読み込み、実際に遊ぶことが可能。
勿論、今回のテーマを盛り込んだ
「詐欺に引っ掛かり、老後資金をだまし取られる」等のコマもあり、
(不謹慎ながら)笑ってしまう。


当日はアーチストも来場しており、
来場者のリアクションを見て
にこやかにしておられた。


会期は~4月14日(日)まで。


アネックス展2024-表彰と趣意-@ポーラ ミュージアム アネックス 2024年3月17日(日)

 

後期の会期は~4月14日(日)まで。


出展は『水永阿里紗・菊池奈緒・鶴見朋世』の三名も
『水永阿里紗』の作品にもっともインパクトあり。

手法は{ステンドグラス}で、
西洋らしいモチーフがある一方、
純日本風のものも。

とりわけ後者は、イマイマの世界での蛮行に対する憤りが
強く打ち出される内容。
タイトルも〔怒り〕とされている。

またガラスに小さな顔が無数に描かれた作品は〔第九〕で
これも同様の想いに付き動かされているよう。

 

メニスル@トーキョーアーツアンドスペース本郷 2024年3月19日(火)

「ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 6」とされている。
統一のタイトルは”メニスル”で、
なるほど三組の作品はそれをきちんと踏まえたものになっている。

 

【一階】には『大庭孝文』の作品。

おそらくは写真や絵画と思われるが
何れも白い和紙に覆われ、下に隠されている実態は観ることが能わず。

光線の加減によっては、ぼうと透けて見えたり、
和紙に付けられたひっかき傷からは下が透けはするものの
全体を知覚する役にはたっておらず。

鑑賞者はタイトルから、その内容を想起するしかなく、
とは言え、その内容は人によってバラバラだろう。


【二階】の『ヨフ(大原崇嘉、古澤 龍、柳川智之)』の作品は
錯覚を意識させるもの。

〔Lights〕は二つのディスプレイによって構成、
一つには電球が映り、もう一つには鉢植えの植物と壁に写るその翳。

ディスプレイの電球を揺らせば、それに連動して植物の影も動く、
なんとも人を喰った仕掛け。


【三階】の『菅雄嗣』の作品を
もっとも興味深く観る。

両の壁には二点づつの油絵が掛かり、
部屋の中央には椅子が一脚、
最奥のスペースには静物画に描かれるような台・布・頭蓋骨。

が、奥の方に近寄ると、空間がぐっと変化する。
どうやら、実際の空間に見えたのは投影された映像のよう。
普段見る三階のホワイトルームにそっくりなので(窓の位置や景色も含め)
全く違和感がない。

しかし暫しその間に留まれば、
一日が過ぎるようにさす陽は動き、部屋の中は明から暗に変わっていく。

人の知覚や境界認識の曖昧さを思い知る。


会期は~3月24日(日)まで。


第17回 shiseido art egg@資生堂ギャラリー 2024年3月17日(日)

第2期展のアーチストは『野村在』。
テーマタイトルは”君の存在は消えない、だから大丈夫。”

 

館内には,それにピッタリの展示が五点。


先ずはタイトルそのものが作品の展示。

天井には打孔機が備え付けられ、
そこから吐き出された透明なテープが床にうず高く積みあがる。

人間の全DNAデータを打ち出すとの試みらしいが、
DNAの数は三十億とも聞く。

壁にはカウンターならぬ現時点の達成率がデジタル表示されるも、
数値は小数点の遙か下。

拍動と同スピードらしいので
完遂するまでに、どれほどの月日が必要か。

しかし、一度始めたら止まらないプロジェクトとも書かれている。


〔ファントーム〕は水槽の中に
インクジェットで死者の写真を印刷する装置。

QRコードを読み込めば、誰でも参加できるとのこと。

ディスプレイには、今まさに印刷しようとしている
依頼者の名前と故人との関係性が表示。

が、数分程度の待ちでは、
全く動きそうになく・・・・(笑)。


〔バイオフォトンはかくも輝く〕は
アーチストが収集したアンティーク写真を暗室内で燃やし、
その炎の光を撮影、ガラスに定着させたもの。

各々、その写真の撮影年と、情景の説明が添えられる。
「満面の笑顔の客船のキャプテン・トム、1999年」といった具合に。

不思議なことに、同じ写真素材なのに、
上がっている炎の色や形はまるで異なる。

さも、写されている中身を反映するように。


会期は~4月14日(日)まで。


重塑-Rebuilding@UNPEL GALLERY/アンペルギャラリー 2024年3月17日(日)

多摩美術大学日本画専攻卒業生・修了生四人展」と書かれている。

タイトルの「重塑」のココロは、
「もう一度積み上げ、再構築する」だと言う。

 


さて、その四人は『阿部エリカ/永田優美/山内明日香/林銘君』。


中でも『永田優美』の描くところの女性に目が行く。
履歴を確認すれば、「卒展」でも目にしているハズだが
とんと記憶に残っていない。

こうした場で観ることで吸い寄せられるのか、
それともスタイルを変えたのだろうか。

それほど印象的な姿態と面立ちの少女たち。


一転、『阿部エリカ』の描く木々は寒々しい。
葉を全て落とし、しかし、白い空間に凛として立つ。


『林銘君』の(例えば)〔降りたつ〕は、
屏風様の仕立ての中に複数枚の屏風が描かれる入れ子構造。

各屏風にも似た情景が繰り返されており、
ゾエトロープ?とも思ったり。


会期は~3月31日(日)まで。


ジョージ ホイニンゲン=ヒューン写真展@CHANEL NEXUS HALL 2024年3月17日(日)

 

『ジョージ ホイニンゲン=ヒューン』は1900年ロシア生まれの写真家で
1968年まで生き、主にファッション誌で活躍したと聞く。

本展ではモノクロームの写真が六十五点ほど並ぶが、
中には『ココ・シャネル』を写した作品が多数。
関係性のほどがうかがい知れる。


斬新な構図や撮影場所も評価れされているようだが、
同時代人のポートレートがとりわけ興味深い。

若い頃の『ダリ』『チャップリン』『ゲイリー・クーパー』『ジャン・コクトー』。
女性であれば『キャサリン・ヘップバーン』『マレーネ・ディートリッヒ』。
とりわけ、煙草を持つ『ディートリッヒ』の、ある種アクの強い顔は印象的。

同時代人と言えば、『ジョセフィン・ベーカー』を写した作品も。
彼女のフィルムにおさめられた姿は複数回見ているものの、
ポートレートは初めてで、新鮮ささえ感じる。

変わりダネとしては
『ダリ』の{シュールレアリスム}の一枚、
〔l'instant sublime〕をそのままコラジューした作品か。
これは、幅の広さも感じられ。


会期は~3月31日(日)まで。