RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

やがて海へと届く@TOHOシネマズ日比谷 2022年4月9日(土)

封切り九日目。

席数106の【SCREEN13】の入りは四割ほど。

 

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「3.11」以降、ふっつりと姿を消してしまった
親友『すみれ(浜辺美波)』の死を『真奈(岸井ゆきの)』は
何年経っても受け入れられない。

もっとも、最初の二~三年ほどは
毎年のように訪れていた三陸の海岸も
今ではとんとご無沙汰なのだが。

死体が見つかったわけでもなく、
津波に呑まれて亡くなったとの証拠は状況だけしかなく、
『真奈』は今でも半信半疑。

時々夢に見る如く、
ふらりと自分の傍に戻って来るのではないかと
淡い期待を持ちながら。

早々と諦め、仏壇を求め弔った『すみれ』の母に対しても、
遺品を整理し、新しい婚約者を見つけた『すみれ』の恋人に対しても、
わだかまりとまでは行かないまでも、釈然としない思いを抱える。


物語は、幾つかのハプニングを経て、
主人公が親友の死を受け入れる迄が
静かな画面で描かれる。

なので、観ていても、これと言ったヤマも無く、
盛り上がりに欠けるのも事実。

突然に切り離されたことによる
残された者の尽きぬ喪失感だけが、
繰り返し繰り返し語られる。

思い出されるのは、相互の懐かしい記憶ばかり。


大学の入学と同時に知り合った二人は、
敢えて言えば水魚の交わり

しかし、時として現実から遊離したような空気を纏う親友の
全てを知らないでいたとの思いは
『真奈』の中にもしこりの様に在る。


が、劇中で、いみじくも「世界の片側しか見えていない」と語られた如く、
後半になり『すみれ』の視点に切り替わった時に、
観客は今までとは異なるストーリーを見ることに。

それは、姿を消したことの直截的な説明にはならないものの、
遠因とも取れるような気持ちの揺らぎ。

観ていて切なくなる思いは、誰でもが共通に感じるのではないか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


主演の二人を観たさに足を運んだわけだが、
ほぼほぼ出ずっぱりのこともあり、
その期待には十二分に応えてくれる。

ではあるものの、折角のペアリングであるのなら、
もうちょっと違う形の物語りを紡いで欲しかったと
思えたのも事実で。