RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

フェイブルマンズ@チネチッタ川崎 2023年3月5日(日)

封切り三日目。

席数284の【CINE5】の入りは三割ほど。

 

 

そうかこうして、『スティーヴン・スピルバーグ』という映画監督は
形作られて来たのだな、との思いを深くする。

電気技術者の父とピアニストの母。
奇しくも「理」と「芸」が交差する出自。

それを冒頭のシークエンスで実に上手く描き起こす。

映画とは何かを論理的に説明する父。
それに比して「兎に角、わくわくどきどきするの」と
より蠱惑的な誘いをする母。

暗闇を怖がる少年をどうやって映画館に連れ込むかの手練手管に、
両親の特性が現れる。

あとあと登場する妹達を含め、
こうした家族(Fabelmans)の存在が大きく影響したのだと。


彼の映画館での原体験は〔地上最大のショウ(1952年)〕。
それも五歳の頃だと言う。

翻って自分は「東映まんがまつり」だったことを考慮すると
彼我の差は大きい(笑)。

初めて観る大画面に興奮し
「すげ~」「面白れ~」とつい口に出していたら、
隣に座った人にキツク注意されたのは今でもトラウマ。

二本目は〔怪獣島の決戦 ゴジラの息子(1967年)〕だったのだが、
その後はふっつりと観に行けなくなってしまったのは何故だろう。


おっと、閑話休題


以降、彼は観ることと合わせて
撮ることにものめり込む。

与えられた8ミリカメラで、
最初は家族旅行のスナップ的な記録が、
やがては妹達に演技をさせた物語り作品に、
あげくには同級生をも大挙動員した大作へと繋がり。

カメラとフィルムは常に共に在り、
楽しさを生み、時に苦々しさの元となり、
やがて生きる為のよすがへとなって行く。

が、その根底には、
初めて映画館で観た映画に驚きの目を瞠った原体験が。

中でも彼が最も入れ込んだシーンが
リュミエール兄弟』による
〔ラ・シオタ駅への列車の到着(1895年)〕と
近似の描写なのは象徴的。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


本作でとりわけ印象的なシーンがある。

母親の『ミッツィーミシェル・ウィリアムズ)』が実母を亡くしたあとで鬱状態となり、
夢現の中で、亡き母からの電話を取るシーン。

これって、〔ポルターガイスト2(1986年)〕で
『キャロル・アン』が(翌朝に亡くなる)おばあちゃんと
(おもちゃの)電話で話すシークエンスと瓜二つ。

 

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス@TOHOシネマズ日比谷 2023年3月4日(土)

封切り二日目。

席数257の【SCREEN9】の入りは九割ほど。

さすが、「本年度アカデミー賞最多ノミネート」との惹句は
集客への寄与度は絶大だなと思う。

 

 

これはシンクロニシティとでも言えば良いのか。
直近公開された数作で、個人の映画体験を紐解いた作品のなんと多いこと。

スピルバーグ』の〔フェイブルマンズ〕は、
自身が映画製作にのめり込むことになった経緯そのものだし、
デイミアン・チャゼル』の〔バビロン〕も「古きハリウッド」へのオマージュが溢れ、
最後には自分が影響を受けた作品がばらばらばらとマシンガンの様に速射される。

その傾向は本作とて例外ではなく、
スター・ウォーズ〕〔インディ・ジョーンズ」〕の各シリーズや
2001年宇宙の旅〕等の{SF}{冒険活劇}モノは勿論のこと、
はては〔モンティ・パイソン〕のシリーズまでが引用。

まぁ大元には、『ジャッキー・チェン』の{カンフー}モノ、
とりわけ日用雑器を技斗に取り込んだそれがあるのは論を待たず。


ストーリー自体は極々シンプル。
マルチバース」の他のバースで脅威となる自身の娘を止めるため
母親が奮闘するとの物語り。

最後は家族愛を歌い上げるものの、
2020年に話題となった〔ミナリ〕と相当に近似の印象を受ける。

先の作品は、移民の韓国人家族が開拓民宜しく奮闘。
中途夫婦仲が険悪となったり、祖母の存在が大きく影響したり。

ちなみに本作同様、「A24」の配給だったわけだが。


マルチバース」等の、最新の言い回しは仕掛けにしか過ぎず、
あくまでも自分(達)が影響を受けた映画を画面上に表現するための方便、
本当にやりたかったのは家族愛を描くとこではなく、
そちらじゃないの?との疑念は
観終わって益々強固に。

ため、語り口は相当に冗長。
披瀝したいマスターピースはたっぷり有る様で
二時間半に近い尺は、中途でぽつぽつと睡魔に襲われてしまう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


監督・脚本の『ダニエルズ』は
2016年に〔スイス・アーミー・マン〕を撮っているが、
肢体の扱いはぞんざい、ブラックで且つ内容も不条理なため賛否両論。

『シャイナート』の方は単独で
〔ディック・ロングはなぜ死んだのか?(2019年)〕を
『ディック・ロング』役としても出演し撮っている。

後者の方は、タイトルが事件が起きた理由そのものへのヒントになっており、
また今回の作品に通じる、かなりお下品な内容となっている。


最新作は、先行二作のトーンを相当に引き継いでおり、
何故にここまで広範に受け入れられるのかはさっぱり理解不能

「A24」最大のヒットということだし。
米国はそこまで家族愛を渇望しているのか。

 

写真をめぐる距離@横浜市民ギャラリーあざみ野 2023年2月24日(金)

折角来たついでだからと、
【展示室2F】にも足をのばす。

タイトルは
”あざみ野フォト・アニュアル2023 横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展”
が、正式か。

 

その通り、古い写真機と
やはり古い写真が並ぶ。

前回来た時にも、似た企画を観たとの記憶も、
個人的には機械よりも写真に興味あり。


洋の東西を問わず古い写真が並ぶ。

名もなき市民を撮ったもの、
ロシア皇帝・皇后」を撮ったもの、
或いは「J・F・K」。

風景なら遺蹟に果ては月面まで。

こうした雑多感覚は凄く好きだ。


会期は~2月26日(日)のため、
既に終了しているが。


大志学園卒業制作展@佐藤美術館 2023年2月26日(日)

 

【4/5階】は「武蔵野学芸専門学校2023卒業制作展」

【3階】は「早稲田国際ビジネスカレッジデザイン科総合学科

例によってエレベーターで五階に上がり、
階段を使って順に降りて来るので
こうした書き方に。


一点、気になった作品が。

タイトルと作者名は失念も
一目観て、ああこれは
キリマンジャロの雪〕に
インスパイアされたのだろうと判る画面。

添えられたキャプションを読むと、
実際にその通りなのだが。


会期は~3月5日(日)まで。


2022年度 第46回 東京五美術大学 連合卒業・修了制作展@国立新美術館

 

【展示室1A/1B/1C/1D/2A/2B/2C/2D】 
【野外展示場A/B/C】で開催。

各大学はHPに独自の告知を上げているが、
統一したHPは作成されてないのね、不思議だ。

そして何時も思うことは、
会場割はどのように決めるのか。

例えば今回、【六本木駅】側の入り口に一番近いのは「女子美」。
実際にそのスペースが最も混んでいた。

そして二階の【乃木坂駅】に近いほど、
人口密度は低いのでは。

抽選かしら(笑)。


まぁ冗談はさておき、
年を経るごとに
斬新な表現の作品が減り
既視感の作品比率が多くなる印象。


会期は~3月5日(日)まで。


三菱商事アート・ゲート・プログラム2021-2022@ヒルサイドフォーラム 2023年2月24日(金)

「支援アーティスト6組による新作展」との副題が付き、
~2月26日(日)まで開催。


今回は映像作品、インスタレーション
イベント連動で参加して成立する企画が多く、
また平面も自分の好みからは少々外れており。

まぁ、こうしたこともあるよね。
行ってみて初めて判ること。


あと、今回異色だったのは
出入り口が常とは逆に設定されており、
カフェ側が入り口になっていて、
これはどうした意図?と。

些細なことでも引っ掛かってしまう。

鈴木清写真展@FUJIFILM SQUARE 2023年2月26日(日)

【写真歴史博物館】にて、
サブタイトルは”天幕の街 MIND GAMES”。

ポスターの写真を見ても内容は判然とせず、
が、中に入り、並んでいる作品を観れば瞭然。

サーカスの大テントのことなのね。

おそらく日本ではないサーカス団の
日々の生活が綴られる。

ショーとショーの合間の、
極々普通の情景が。


自分が幼い頃は
夏になると小学校のグラウンドに
露店や出し物の店が並んでいたのを思い出す。

数年に一度はサーカスが来て、
空中ブランコや綱渡り、マジックを
固唾を飲んで見ていたなあぁ。

あと、見世物小屋では「蛇女」か。
なんのことはない、妙齢の女性が、
鶏の生き血を啜り、蛇の生皮を剥ぐ行為だったが。


歩を進めながら、ふっと記憶が蘇える。

会期は~3月29日(水)まで。

鈴木清写真展「天幕の街 MIND GAMES」 | 写真展・ フジフイルム スクエア(FUJIFILM SQUARE)