RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

愚行録@チネチッタ川崎 2017年2月23日(木)

封切り六日目。

席数290の【CINE4】の入りは四割ほど。


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《怒り》もそうだったけど「世田谷事件」にインスパイアされた小説、
そして映画がぱらりぱらりとリリースされだし、
その何れもが刺激的。

それだけ製作者サイドを刺激する事象だった
ということなのだろう。


実の妹『光子(満島ひかり)』が実娘のネグレクトで逮捕収監されている最中、
週刊誌記者の『田中武志(妻夫木聡)』は一年前の一家惨殺事件の取材を
再び始める。

世間的には忘れ去られようとしている事件にのめり込むことに、
(妹の逮捕を知っているので)
何かせずにはおられない故の行動だろうと周囲は理解を示す。


しかし、コトはそう単純ではいことがおいおい明らかになり、
鑑賞中に「しまった!」と思うことになる。

なんとなれば、
あまりにも漫然と観過ぎていたため、
中途から予期せぬ要素が紛れ込んで来た時に
今までのシーンが反芻できない。

見る側の勝手な思い込みを逆手に取った
上々の語り口になっている。

これは、もう一度見直さないと
正しい理解には至らないかも。


全編を貫くトーンとしては
格差の問題が強く前面に出ている。

一例として、付属小・中・高を持った
私大が挙げられている訳だが、
確かに自分の世代でも、本作で描かれているようなエピソードはまま有った。

まあ、ただでさえ、地方出身者と首都圏の在住者は環境に於いて差が有り、
加えて、特に小・中校からの内進者であれば多くがお坊ちゃま・お嬢ちゃま、
ライフスタイルが歴然と違うわけで・・・・。


此処では主人公である『武志』を除き
多くの主要な登場人物は、より上のステイタスに上がろうと
異なるカタチであがき続ける。

貧困は遺伝する、とも言うけれど、
それをまさに具現化する数々のエピソード。

目的の為には手段を選ばないモノ達が
周囲も自分をも不幸にしてしまうけど、
それはとても復讐と切り捨てられる中身ではない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆☆。


幾つかの重要なピースをばら撒きつつも、最後まで収斂させずに
唐突なエンディングを迎える。

しかしそれらを寄せ集めて再構築すれば、
貧困や格差に根ざすイマイマの日本の実相が
明確に浮かび上がって来る。

家族や、或いは友人(と、思っていた人間)にまで
ココロを許せない世界って、一体なんなんだろ?