RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

リリーのすべて@TOHOシネマズ新宿 2016年3月31日(木)

封切り丁度二週目。

席数73と極小の【SCREEN12】は満員の盛況。


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見ている中途から、いや実際は
かなり早い時点から『エイナル/リリー』は
「DID/解離性同一性障害」所謂、多重人格なのか、それとも
GID性同一性障害」なのか、判然としなくなって来る。

女装をすること、が
『リリー』が表面に出て来るきっかけなわけで、
実際、昔語りをするシーンでは、
幼い頃、同じ事象が有ったことにも触れられている。

脚本は、それらを最後まで曖昧模糊とし通す。

観る側は何とももやっとした感情だけど、
それが『エイナル/リリー』が抱いていたのと同一なものを与えようとしたのなら、
制作者の側はかなりの策士だ。


もう一つ面白いのが妻である『ゲルダ』の造形。
元々の彼女は、日本なら「姐御」と言われるタイプの
男勝りな性格。

それが夫が女性化するに伴い、自身も女性としてのたおやかさが前面に出る。
なんとも興味深い。


ただ、物語の全てを規定するのは1926年と言う時代とその背景。
第二次大戦の前だし。

今でこそ、それなりの理解は進んでおり、
実際に性転換手術を受けた人もメディアではたびたび目にするけれど
往時はどれほど奇異な眼で見られたか。

それを指し示すエピソードも幾つか用意され、
全く申し訳ないことだけど、思わず笑い声を上げちゃった。

なので、その年号が冒頭提示された時に
思わず仰け反ってしまった。

今から九十年も前に、こんな無謀なコトに挑んだ人間がいたのかと。

そして例によって事前の予習を全くしてなかったから、
物語の帰結にはかなりの衝撃を受けた。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


やはり素晴らしいのは『エイナル/リリー』を演じた
エディ・レッドメイン』。

前回『スティーヴン・ホーキング』を演じた時も
外見からしてらしかったけど、本作でも
指先までも神経が行き届いている。

次第に女性らしくなって行く変化は
ぞくっとするほどだ。