封切り八日目。
席数224の【SCREEN1】の入りは四割ほど。
1970年の暮れ
全寮制の男子校「バートン高」ではクリスマス休暇を目前にして
生徒たちは皆浮かれ気味。
これから先の二週間、家族の元へ帰る者、
家族と旅行へ行く者と、楽しみは尽きない。
が、その中に
家庭の都合で寄宿舎に留まることになってしまった
浮かない顔の生徒が数名。
ただその後に家族の迎えもあり、
生徒として残ったのは『アンガス(ドミニク・セッサ)』がたった一人。
監守役を押し付けられた
古代史教師の『ポール(ポール・ジアマッティ)』、
同校卒業の息子をベトナム戦争で亡くしたばかりで
住み込みで働く料理長の『メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)』と
三人だけの長い年末・年始が始まる。
『ポール』は、病気による独特の体臭と斜視の外見、
容赦ない成績評価もあり、生徒からは蛇蝎の如く嫌われ
同僚からもこころよく思われてはいない。
それでも、自身の母校でもある「バートン高」に対する想いは人一倍、
生徒達の人間としての成長のために心を砕く。
『アンガス』は、頭は切れ成績も悪くはないものの、
特殊な家庭事情もあり、性格面に問題が。
とりわけ宜しくない素行で、転校や落第も経験している。
『メアリー』も含めたクセのある三人だが
閉鎖空間で時間を過ごすうちに
次第に心を開く。
わけても『アンガス』と『ポール』は
相手の過去に何があったのかを知るにつれ、
互いに深い共感を抱くように。
既視感はあるものの、
印象的な数々のエピソード、
伏線と意外な回収、
小道具の使用、
そして洒脱な会話、と
脚本の練り込みが素晴らしい。
とりわけ休暇中の監督規則を都合よく解釈し、
古びた車でボストンまで長駆、
そこで起こる幾つもの事件が二人の結びつきをより強固にし
万感の思いが込み上げる最後のシークエンスに繋げる。
上っ面な親子関係よりも
肝胆相照らした他人の方が
よほど思いやりの気持ちが強くなる。
帰結としての自己犠牲は
やや優等生に過ぎるきらいはありつつ。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
本編前の「Universal」のオープニングロゴからも
1970年代の香りがぷんぷんと感じられ、
オープニングクレジット、
エンドロールの形式も同様で、
物語世界のみならず全体のパッケージングから
観客を往時に連れ戻そうとの強い意図があるよう。
我々にはうかがい知れぬ部分も多いが、
米国に住む人々には、どのような記憶ともにあるのだろう。