RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

VESPER/ヴェスパー@チネチッタ川崎 2024年1月20日(土)

封切り二日目。

席数129の【CINE2】の入りは七割ほど。

 




鑑賞時点での「IMDb」の評点は6.0、
「Metascore」の方は70と
なんとも微妙なところ。

それでも
ブリュッセル国際映画祭」で「最高賞(金鴉賞)」等の情報を信じて
鑑賞に行ったのだが・・・・。


風の谷のナウシカ〕で『宮崎駿』が提示した世界観。

崩壊した地球
文明の分断
人類に牙を剥く昆虫や植物

それを変えようとする少女
対抗勢力

そうした諸々が
カタチを変えて本作でも繰り返され、
目新しさの点では皆無。

加えて、今居る閉塞した場所からの脱却もテーマとして取り込まれ、
これもかなり手垢の付いたモチーフ。


舞台は近未来の地球。
主人公は荒廃した土地に住む少女『ヴェスパー(ラフィエラ・チャップマン)』

彼女は戦争で四肢が動かなくなった父親の面倒を看ながら、
狂暴化した植物を従順化させる実験に時間を費やす。

また、
富裕層が住む都市「シタデル」から供与される
撒いても種ができない穀物の遺伝子情報を解き明かし
飢えのない世界を創ることも。

が、それに横槍を入れて来る
叔父の『ヨナス(エディ・マーサン)』の存在は目の上のたん瘤。
なまじ地域の有力者且つ「シタデル」ともつながりがあるだけに始末が悪い。

ある日、墜落した「シタデル」の飛行艇から
権力者の娘という『カメリア(ロージー・マキューアン)』を救い出したことから
物語りは動き出す。


タイトルの形式は勿論、
主人公のモチベーションや発端までもが
先の作品をなぞっていることに先ずは驚愕。
些細なエピソードを含め、
あまりにも似すぎている。

一方で、実際には、世界を変えるほどの大きなことを成し遂げようとしているのに、
その広がりがまるっきり感じられないのには脱力。

現実には壮大な世界観も、
狭い世界の、小さな個人のお話に収斂させてしまった恨みもある。

二時間ほどの尺に多岐に構築された設定を詰め込んだにもかかわらず、
言葉や描写による説明は過少のため
鑑賞者はかなり多くを想像でふくらませる必要が。

それでも
ディテールの辻褄が合わないように感じられるし
役割が明示されないまま残った群があるように思えるのは
たぶん独り善がりではないのでは。

圧倒的に、時間が足りていない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


とは言え、親が身を挺して子供の世代に伝え委ねるとの、
自然界の輪廻を巧みにストーリーに取り込む上手さはあり。

また、支配層であり、現在の文明を司る「シタデル」の住人が
下層からの簒奪を基に死生の理に抗おうとしていることは
爛熟した文明が陥りがちな欲望への痛烈な風刺でもある。

本作でのディストピア
イマイマの世界の延長線上に在るのだから。