封切り九日目。
席数349の【シアター6】は一席置きの案内だと実質175。
その八割りは埋まっている。
「馬鹿だ・・・・」が最初に口をついて出た言葉(勿論、褒めてます)。
「第34回木村伊兵衛賞」を受賞した
〔浅田家〕を「@パルコ」で2009年に観た時の第一印象。
『林ナツミ』の〔本日の浮遊〕や
『坂口真理子』の〔訪々入浴百景〕にも同じ感想を持ったものだが
アートの世界はやったもん勝ち。
完成度の高い斬新な手法で先出しすれば一気に注目を集め
トップシーンに躍り出る。
もっともワンアイデアでは当然長続きせず、その後に
どうピボットするかも見せ所。
業界で永く生き残るのは並大抵のことではない。
本作では〔浅田家〕で世に認められるまでが前半部。
この辺は展覧会のキャプションでもふれられ
多くの記事にもなっており、それらを読んだ記憶から
想定の展開。
ただ、こんな異才が身内に居たら、家族も大変だよねぇ、と
繰り出されるエピソードにひたすら笑うばかり。
それでも彼は成功したのだから。それも万分の一の確率で。
初めて知ったのは後半部。
「(あなたの)家族写真撮ります」は写真集にも書かれていたので既知。
ただホントにそこそこの数を受けていたんだねぇ。
最初の自身の家族は愛情を底に秘めながらもややぞんざいに、
次いで他人の家族には丁寧に向き合う情感の発露が豊かに描かれる。
ああ人と人との繋がりってホントに暖かいものだなぁ、って。
観ている側も笑みがこぼれる。時に泣かせる描写もあるけれど。
そして「3.11」の大災害。
先の「家族写真」で知己を得た一家の安否を気遣い訪れた先で
ひょんなことから「思い出サルベージ」のボランティアに参加。
この一連の経緯が、押しつけがましくなくて良い。
ごくごく自然に、その輪の中に入って行く。
そしてまたそこでも写真が仲立ちとなり、幾つかの家族が再生する。
多くのものを失い、けして元々のカタチではないけれど、
新たな萌芽なのは間違いない。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
それにしても、権威が認めたことで爆売れした写真集。
持ち込み時にすげなくした編集者のお歴々は
忸怩たるものがあったろう。