RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー@TOHOシネマズ川崎 2022年5月21日(土)

封切り二日目。

席数150の【SCREEN4】の入りは四割ほど。

 

 

コミックスで言えば、前作(2017年)は、ほぼほぼ10巻まで。

そして本作では、例えば1巻からのエピソードの借り出しはあるものの、
ほぼほぼ13巻まで。

なので「To Be Continued」の文字をスクリーン上に見た時は、
(どれだけの尺を取るのかは分からないが)次作で27巻までを描き切れるのかと
不安がとととと胸をよぎる。

相当の省略をしないと何ともならないよねぇ、と。


なまじ原作の構成がしっかりしているだけに、
忠実に作っていれば、良作になるのは論を待たず。

それを変に手を入れてしまうことで、
矛盾や疑問が湧いてしまう。

それが無残にも表出してしまったのだが前作で、
脚本・演出・役者(特に子役)の三拍子が揃ってダメとの、
無残な一本。

今回も、先に挙げた組み換えがあることで、
設定的にも違和感のある印象。


とは言え本作、全体的な出来としては前作よりもかなり良くなっている。

あれから五年も経ち、主要な二人にもかなりの進歩がみられるはその一因。

加えてアクションについては最初から薄めにしてしまい、
人間関係や心理のドラマ部分を厚めにしたことが
全体的な仕上がりには吉となった。


もっとも、歳月の経過は残酷で
『本田翼』は29歳になり、
『山田涼介』も同い年か。

なので、少年から青年への成長譚とのテーマは
かなり斟酌をしないと辛い状況。

一方で、『ウィンリィ』を演じる『本田翼』が
原作と同じ服装で出て来るので、
健康的を通り越した艶めかしい肢体になってしまい、
鑑賞する側からすれば嬉しい余禄。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


寺田心』の演技が酷いコトを除けば、
新たに登場した全ての人物について(いや、過去作もそうであったのだが)、
役柄にぴたりと嵌ったキャスティングと造形、
とりわけ
『ランファン(黒島結菜)』
『キンブリー(山田裕貴)』
『アレックス・ルイ・アームストロング山本耕史)』
ホーエンハイム内野聖陽)』
『ブラッドレイ(舘ひろし)』
は、素晴らしい。

どうやら次作でも、この流れは踏襲されるよう。

 

ハケンアニメ!@109シネマズ川崎 2022年5月21日(土)

封切り二日目。

席数118の【シアター5】の入りは三割ほど。

 

 

映画版〔ホリック xxxHOLiC〕での収穫は、
ほぼほぼ『吉岡里帆』の巨乳だけだった、との
何とも残念な結果で、あまつさえ
過去の『蜷川実花』作品に比べればその露出度は低め、
監督に対しては次回作に向け
猛省を促したいところ。


さて、その『吉岡里帆』。

「どんぎつね」で魅せるコケティッシュさ、
〔見えない目撃者(2019年)〕での存在感。

演技派とはまだまだ評せないものの、
なりきり感はたいしたもので、
役柄からの匂いがぷんぷんと漂って来る造り込み。


そんな彼女が今回演じるのは
アニメ作品の監督。

それも、その初回作を以って
覇権=ハケンを獲ると豪語する勢いの。

もっとも、業界的には一度の失敗が命取り。
退路を断ち、自身を奮起させるとの意図もあるよう。


最初タイトルを見た時は、ハケン=派遣だと、
厳しい労働環境の日本のアニメ業界を描いた作品と
勝手に思い込んでいたら、まるっきり違ったのね。

勿論、冒頭のシークエンスでは
多くの人々が携わる制作の状況が語られる。

当然これは、最後のエピソードに効いており、
映像に於ける巧い伏線の張り方とも言える。


大団円は「友情、努力、勝利」の三大原則とはなるも、
それに至る過程が良く出来ている。

目標でありライバルである先達の監督に
『王子千晴(中村倫也)』を配し、
一癖も二癖もあるプロデユーサーには『行城理(柄本佑)』、
また獅子身中の虫が居る一方、作品に真摯に向かうスタンスに
次第に感化される周囲の流れもある意味王道、
見ていてついつい胸が熱くなる。


また、この手の作品にはお約束、
エヴァンゲリオン}や{ガンダム}からの科白やビジュアルの引用も度々で、
軽いアニメファンをも楽しませる脚本も善し。

一方で〔あしたのジョー〕や〔エースをねらえ!〕〔スペースコブラ〕あたりでの
『出﨑統』による演出への言及もありで、ついニヤリとしてしまう場面も。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


劇中で度々言及される「人生を変えるほどの一本」には
まだ出会ったことが無いけれど、
今でも記憶しているトラウマになった作品は間違いなく存在する。

それはアニメ版の〔海のトリトン(1972年)〕。

最終回でとんでもない卓袱台返しが行われ、
自分が今まで見て来た正義とか価値観がガラガラと崩壊。

最初は何が起きているのかさっぱり理解できなかったほどの逆転劇。

コミックのみかえしで、『手塚治虫』自身がいみじくも
「テレビまんがのほうは、ぼくがつくったものではありません」と
わざわざ言及するほどの。

長じて『富野喜幸』の作品であることを知り、なるほどと納得するのだが、
似たような設定は、本作でも取り込まれているよね。

 

写真家エリオット・アーウィット作品展@FUJIFILM SQUARE 2022年5月3日(火)

プロフィールを確認すれば
1928年生まれの『エリオット・アーウィット』は存命且つ、
「マグナム」でも最高齢の写真家とのこと。

 

「観察の美学 筋書きのない写真たち」との副題が付されている。

展示されている作品は、大きく二群に分けられ、
一つは日常のユーモラスな一瞬を切り取ったもの、
もう一つは有名人を写したもの。


前者は綿密に設計をして撮ったものか、
それとも街を渉猟していての偶然の産物なのかは分からぬが、
みていて思わずニンマリと笑いがこみ上げる。


後者では『マリリン・モンロー』や『ジョン・F・ケネディ
或いは『グレース・ケリー』の写真が。

『JFK』の一枚は『アイゼンハワー』の元を訪れた際だし、
グレース・ケリー』に至っては、これから婚約決定の記者会見に臨もうとしている刹那の一枚。

何れも、画面からその場の緊張感が伝わって来る。

一方、『MM』の一葉は、随分と寛いだガウン姿で、
窓に向かい身を乗り出そうとしている瞬間をおさえている。

一転、リラックスした印象も、その後の彼女の運命を思い起こすと、
何とも複雑な気分になってしまう。


会期は~6月29日(水)まで。
【写真歴史博物館】にて開催。


 

Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022 受賞記念展@東京都現代美術館 2022年5月4日(水)

 

「TOKAS」との連動企画。
「TCAA」受賞者の企画展とのこと。

それにしても第2回の期間が2020-2022年で
且つ受賞者が二名って、どれほどのものなの?

 

で、その二名は『山城知佳子』と『藤井光』。

前者は映像作品が主体、
そして後者の作品は{戦争画}に関するもの。

しかも、〔戦争画〕そのものが展示されているわけではなく、
カンバスの無い、おそらく実寸大の木の枠組みだけが
整然と並んでいる。

ただキャプションはきっちり添えられており、
年代/作者/タイトル等は判る様に。

例えば、
1943年/藤田嗣治アッツ島玉砕
のような。

自分であれば、それをよすがに原作の記憶を辿るのだが、
それは作者が目指した本意とは異なるだろう。

戦時中に描かれたこれら作品は、戦意高揚目的は勿論も、
中には反戦の匂いを感じるものも多々あり。

それらは、戦後、数奇な運命を経る。
中には所在が不明となったものも。

そうした経緯を思い描きながら、戦争と芸術について思いをはせるインスタレーション

たまさかではあるけれど、あまりにタイムリー。

 


会期は~6月19日(日)まで。

高橋宣之写真展:神々の水系@キヤノンギャラリーS 2022年4月30日(土)

 

タイトルは「水」となっており、
実際並んでいる作品にも水を扱った作品は多い。

館内にもBGMとして水音が流されているし。


しかし、自分の目に留まった幾枚かは、
人々が住まう場所であったり
風俗や風習を捉えたもの。

積もる雪の下に佇む家々。

神を祭る儀式の数々。

しかし過疎化もあり、そうしたものは
次第に消えて行く定めで、
資料的な見地からしても貴重。


おそらく、作家の出身地である
四国地方のものと思われるが、
自分の故郷を重ね合わせ、
ちょっと胸が熱くなった。


会期は~6月15日(水)まで。


ミロコマチコ展「うみまとう」@クリエイションギャラリーG8 2022年5月14日(土)

 

絵本作家としてデビュー以降、
数多の作品を創り出し、
更に活動の幅を広げているという
『ミロコマチコ』の個展。

会場内には代表的な作品に加え、
一番広いスペースには、
そこで行われたであろうライブペインティングの痕跡がそのままに
一種のインスタレーション

一部始終は映像化もされ、視聴も可能。

それにして、大掛かりな上に、
激しくパワーを感じる。


しかし、原画として展示されている幾つかは
大胆な筆致に反して柔らかく繊細な印象。

アンビバレンツさに、心がざわついてしまう。


会期は~5月23日(月)まで。


平手展「拳に綿を詰める」@ガーディアン・ガーデン 2022年5月14日(土)

 

”第23回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展”と書かれている。

その割には館内を埋め尽くすのは
ほぼほぼ立体なのだが・・・・。

それも人に似せ、(おそらく)綿を詰め込んだ、
人形ともオブジェとも付かぬ、何とも怪しげなモノ。

それらの物体は、基本触っても可で、
作者による「壊れても問題ありません」との書き付けもあり。

中には「テルミン」を組み込んだものもあり、
係員さんにお願いすれれば、実際に演奏?することも可能。

会期は~5月21日(土)まで。