RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ポーラ ミュージアム アネックス展2020@ポーラ ミュージアム アネックス 2020年10月18日(日)

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タイトルは”透過と抵抗”。


『青木美歌』のガラス作品は

 ”あなたに続く森”でも観ているけど、
今回のものはより透明度の高いもの。

 

でもその中に小さな気泡が存在することで、
却って心が落ち着く。


中村愛子』は滞廊しており、来場者の方とも懇話中。

作品は{ステンドグラス}も、その表現形式が面白い。
過去の記憶や一瞬のスナップをコラージュしたような
極めてイマっぽい。

 

後期の会期は~11月15日(日) まで。

最初の週末の昨日が雨だったせいか、
今日の来場者は中々の数。
自分が滞廊中でも延べ十二名ほど。

床面を使った展示のもあるので
余計に人の多さを感じてしまう。

中西敏貴写真展:Kamuy@キヤノンギャラリーS 2020年10月17日(土)

タイトルから展示品は北海道を題に取ったものと見当は付くも、
プロフィールを確認するとご本人も同地に居住されているよう。

 

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山の自然を極端な接写と遠景を併用しながら展開しているのだが
観ている内にどちらがどちらか次第に混乱して来る。

遠いは近いし、近いは遠い、的な。


そして本来なら荒々しい荒涼とした景色も、
軟らかさを帯びて見えるようになる不思議。

館内は薄暗い空間。そして写真は後ろからの光源でぼうと光り、
BGMには梟の鳴き声などの自然の音が流れる。

それも一助となっているかもしれない。


会期は~10月31日(土)まで。

報道写真記者と広告写真家の比較作品展「ニッポン」@キヤノンオープンギャラリー1 2020年10月17日(土)

”~写真のホンマとウソ~ Vol.2”とのセンセーショナルなサブタイトル付き。
「Vol.2」と言うからには当然「1」もあったわけで、
見逃したのは返す返すも残念。

 

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それにしても、写真の嘘って何だろう。

『新藤健一』が〔写真のワナ〕で書いた様に
ある一部分を有意をもって切り出す、
或いはミスリードさせるキャプションを意図的に付ける
などが直接的なウソだと思うが。

アイスコーヒの広告で、美味しく見せる為に
中に入っている液体は実際はコーヒーではない、などは
その例になるのかしら。


ここで並んでいるいる写真は、報道が目的で撮られた作品もあれば、
個人的な嗜好によるものもあるし、広告的な側面を持つものと
多くが混交。

正直、カテゴライズの境界はかなり曖昧に見え、
撮った人の肩書と、タイトルすらも隠してしまえば
どうとでも解釈可能な四十点。


その分、バリエーションが豊富で
観ていて全く飽きないんだが。


会期は~10月26日(月)まで。

第49回入札制オークション@Bunkamura Gallery 2020年10月17日(土)

オークション期間は~10月25日(日)、
アフターセール期間は~11月4日(水)。

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会期最初の週末も、冷たい雨のせいか
来場者もぱらぱら。

ただ中には常連さんらしく、ギャラリー関係者と
親しく言葉を交わす人もおり。


時節柄『バンクシー』、或いは『金子國義』の作品が多いのも最近の傾向。

ただ今回も、自分が探している方向性の作品が無いのは残念で。

 

イラストレーターが挑む寺山修司の言葉@Bunkamura Box Gallery 2020年10月17日(土)

普段であればあまり気に掛けない標題施設も
今回の顔ぶれを見ればハナシは別。

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基本、即売を兼ねた展示会も
例えばポスターにあしらわれている『七戸優』の作品などは
何時も乍ら非売品。

もっとも、プライスが表示されてたとして、手は出ないだろうが。


入り口脇には『及川正通』の二畳ほどもある大作が飾られ
これも価格は「お問い合わせください」。


宇野亞喜良』の〔書物の少女〕や
須川まきこ』の〔七度の恋〕でもたっぷりと目が潤される。


元々は「寺山修司記念館」で開催された内容らしいけど、
場所は青森の三沢でしょ。とっても行けない。

それをこんな近場で観れるんだから
有り難い限り。
まるっきり同内容でないとしても十分に満足。


会期は~10月22日(木)まで。

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ@109シネマズ川崎  2020年10月10日(土)

封切り二日目。

席数118の【シアター3】は一席置きの案内だと実質59。
その八割りは埋まっている。

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自分の故郷を人に紹介する時に、
何とも複雑な思いにとらわれる。

愛憎半ばとの表現は言い過ぎか。

「いいところだよ。でもね」と
口をついてしまうのが常。


一方、礼賛の言葉しか出てこない人々も確かに存在。

それは札幌や横浜の出身者に多い印象。

あくまでも自分の狭い交際範囲内での話だけど。


シリコンバレーにIT企業が集中したことで
サンフランシスコ一帯は居住者が激増、
交通渋滞は茶飯事で住宅価格は高騰、
ホームレスの増加といった問題が広がっている。

黒人に対する差別は変わらず。
理由もなく銃撃され命を落とす者も後を絶たない。

それでも『ジミー・フェイルズ』がこの街を愛するのは
三代に渡って住み続けている上に、
祖父が建てたビクトリア様式の豪邸が今でも残っているから。

父の失敗により手放してしまったものの
往時を留める姿を仰ぎ見ながら
再び自分が住むことを夢見ている。


そんな折、現所有者の相続争いで
当の屋敷が空き家に。

一瞬の間隙を突き、昔家に有った家具を運び込み
不法に占拠し暮らし始める『ジミー』。

幼い頃と同様の夢にまで見た暮らし。
しかし、分不相応の生活はそうそう永くは続くはずもなく・・・・。


主人公の街への、特に過去に住んでいた家への偏愛が
どうにも過剰な印象。

これに共感できるかどうかが、本作の評価の分かれ目になるよう。

ちなみに自分は、先にも述べたように、故郷への思いはどうにも複雑。

それを反映した見方に、自ずとなってしまうわけで。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


挿話の積み重ねも散文的。

マイノリティへの視線との芯はあるようだが、
それを炙り出すエピソードがブツ切れで、
観ていてどうにも納まりが悪い。

特にラストシーンでの主人公の行動は
前進的な高揚と捉えるべきも、その契機がどうにも弱く。

狂信的な自身の思い込みが、周囲の起爆剤により破壊される経緯が
それほどのインパクトをもたらす内容かと、どうにも釈然とせず。

フェアウェル@TOHOシネマズ川崎  2020年10月11日(日)

封切り九日目。

席数542の【SCREEN5】は一席置きの案内だと実質271。
客の入りは、その二割りまではない感じ。

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末期の肺癌の為、余命幾ばくもないと診断された中国に住む老母に
日本とアメリカに住む兄弟は相談し告知をしないことを決める。

しかし長男の息子が中国で結婚式を挙げるのを口実に
親族が集まる思い出を作れる場の設定を目論む。

一方、ニューヨークに住む孫の『ビリー』は
感情が顔に出易いからとの理由で留守を言いつかる。

が、人一倍祖母に対して思い入れの強い彼女は
言いつけを破り、長春へと向かう。

案の定、顔を合わせた途端に挙動が不審になる『ビリー』。
周囲の機転で事なきを得たものの、結婚式を終え帰国するまで
秘密を守り通せることができるのか、が一つのサスペンス。


長年暮らしたアメリカであれば、
間違いなく告知するであろうし、逆にしないと罪になるくらい。

西洋式の考え方が沁みついている『ビリー』と
考え方はモダナイズされていても、最後の最後までしないと決めた
東洋的な考えが根底にある親以上の世代との相克。

直近の日本ではだいぶ変わって来たようだけど、
ほんの十年ほど前まではしない選択比率はかなり高かったかも。

本作はそういった東洋と西洋の
根底にある考え方のぶつかりをテーマとしてはいるものの
敢えて強く打ち出すことはせず、
結婚式にありがちな幾つかの騒動に絡めて、
幾分ソフトに表現している。


なので激しいドタバタが起きるわけではなく、
哄笑するシーンが続出するわけでもない。

主人公の煩悶も最初は強くあるものの、
次第に現地の思想に順応し軟化して行く。

正直、やや物足りない表現が続出する。


それよりも感じ入ったのは老いて尚、
子供や孫の世代を慈しもうとする心根の有り難さ。

自身の体調の悪さは自覚しており、
度重なる検査や投薬に不信感を持ちはするものの、
それを差し置いても子孫の繁栄を第一に考える。

洋の東西の違いはあっても、これだけは共通の思いではないか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


同時に、一種のヤングアダルト状態にある主人公の
成長譚とも捉える。

見得を切って家を出はしたものの、何をやってもうまくいかず、
希望する職にも就けず、日々の糧にも困窮する主人公が
一連の行事を終え帰国した後に見せる晴れやかな表情はどうだろう。

まさにイニシエーションを経たと表現できるくらい。