封切り二日目。
席数118の【シアター3】は一席置きの案内だと実質59。
その八割りは埋まっている。
自分の故郷を人に紹介する時に、
何とも複雑な思いにとらわれる。
愛憎半ばとの表現は言い過ぎか。
「いいところだよ。でもね」と
口をついてしまうのが常。
一方、礼賛の言葉しか出てこない人々も確かに存在。
それは札幌や横浜の出身者に多い印象。
あくまでも自分の狭い交際範囲内での話だけど。
シリコンバレーにIT企業が集中したことで
サンフランシスコ一帯は居住者が激増、
交通渋滞は茶飯事で住宅価格は高騰、
ホームレスの増加といった問題が広がっている。
黒人に対する差別は変わらず。
理由もなく銃撃され命を落とす者も後を絶たない。
それでも『ジミー・フェイルズ』がこの街を愛するのは
三代に渡って住み続けている上に、
祖父が建てたビクトリア様式の豪邸が今でも残っているから。
父の失敗により手放してしまったものの
往時を留める姿を仰ぎ見ながら
再び自分が住むことを夢見ている。
そんな折、現所有者の相続争いで
当の屋敷が空き家に。
一瞬の間隙を突き、昔家に有った家具を運び込み
不法に占拠し暮らし始める『ジミー』。
幼い頃と同様の夢にまで見た暮らし。
しかし、分不相応の生活はそうそう永くは続くはずもなく・・・・。
主人公の街への、特に過去に住んでいた家への偏愛が
どうにも過剰な印象。
これに共感できるかどうかが、本作の評価の分かれ目になるよう。
ちなみに自分は、先にも述べたように、故郷への思いはどうにも複雑。
それを反映した見方に、自ずとなってしまうわけで。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
挿話の積み重ねも散文的。
マイノリティへの視線との芯はあるようだが、
それを炙り出すエピソードがブツ切れで、
観ていてどうにも納まりが悪い。
特にラストシーンでの主人公の行動は
前進的な高揚と捉えるべきも、その契機がどうにも弱く。
狂信的な自身の思い込みが、周囲の起爆剤により破壊される経緯が
それほどのインパクトをもたらす内容かと、どうにも釈然とせず。