RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

君の膵臓をたべたい@TOHOシネマズ錦糸町 2017年8月1日(火)

封切り五日目。

席数223の【SCREEN4】の入りは六割ほど。


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人を死なせることだけで泣きを取ろうなんて安直な姿勢には
虫唾が走る。
何かしらの捻りを加えることが必須でしょ、と
しつこく繰り返し書いてしまう。


原作は未読。
しかしそのタイトルや予告編からは、所謂
難病モノであろうとの想定は付く。

ヒロインが亡くなることが前提で
要はその死なせかた、或いは残された者の悲しみへの焦点の当て方がキモなわけだ。

で、まぁ良い意味で期待を裏切られた、と
素直に言っておく。
想定していたよりも数段良い出来で完結させたことに
驚いている。


まずはヒロインを演じた『浜辺美波』が上々。

普通なら絶対こんな喋り方しないだろう、と
感じる科白の数々も、彼女の口から発せられれば
妙に違和感がない。

そして、天真爛漫な子供でもない、
ましてや影のある大人にもなり切れていない、
美人過ぎず、ぶちゃいくにもならずの
等身大かつ透明感のある存在が際立っている。

おまけに、こんな性格の良い娘はそうは居ないよね、と
世間ズレしたおぢさんは思ってしまうわけだが
嫌味にならない程度に演じているものだから
好感度も高し。


彼女の死にまつわる一連のエピソードは
完全に事前の予想から外れており、
しかしきちんと反芻すれば
それなりの手掛かりは示されているわけで
ただ、そのあまりのさりげなさに
全くのノーマークであったことは返す返すも読みが浅かったと臍を噛む。

死は誰にでも平等に訪れ、それが早いか遅いかの違い、
または、生は突然断ち切られる可能性があるわけだから
その日その日を後悔しないように生きるべしとのメッセージは
他の作品でも繰り返し語られるテーマだけれど、
実は本作の白眉は、そこにはないんじゃ、って改めて思う。


〔あと1センチの恋〕でも描かれた様に、
互いに好ましく思ってんなら
一気に行っちまえよじれったい、と思わせるもどかしさの連続が
実は本作の柱なのではないかと、観終わって改めて思うわけだ。

ましてや先の作品は、海外且つイイ歳をした二人であったのが、
ここでは日本人で高校生だものなぁ。

親近感が半端ではなく、愛おしさが連続する展開に、
も~胸がしめつけられるのは請け合い。


恋人ではない、しかし友達以上の存在。
互いに好ましく思っているのは間違いないのに
なかなか事態は進展しない。

先にも挙げた主人公の以上・以下の造形が
関係性の面でもきちっと踏襲されているので
尚更、切なさが際立つ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


仕掛け自体に多少のあざとさはあるけれど
全編を通してみれば、そんなに気にならず、
物語の世界に没入できる。

現在と過去の場面転換が一連の流れとして
極めて自然なのも上々の工夫。