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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

怪物の木こり@チネチッタ川崎 2023年12月2日(土)

封切り二日目。

席数244の【CINE6】の入りは二割ほど。

 

「怪物の木こり」の童話の主人公は
「木こり」の姿をした「怪物」。

普段は「木こり」も、時として「怪物」に変容、
人を襲い食べ尽くす。

お婆さんを食べ、
が、ある日、自身の親友を殺してしまったことから、
誰も話す人が居なくなり、
途方に暮れた「怪物」は住んでいた村を離れ
新しい村に移り住む。

そこで赤ん坊を自分と同じ異形に作り変え
自身の仲間を増やして行く。

これでもう「怪物」は寂しくなくなりました、
めでたしめでたし?


当然このストーリーは本作の中身とシンクロ。

殺人鬼やサイコパスがぞろりと登場、
「PG12」の設定と
三池崇史』の監督作品らしく
死体はごろごろと転がるし、
血飛沫は噴水のように飛びまくる。


世間を騒がせている連続殺人鬼は
斧で被害者の頭を割り、脳を持ち去る「脳泥棒」。

殺害の仕方以外に一貫性が無いように見えていたものの、
警視庁の『戸城(菜々緒)』のプロファイリングにより
浮かび上がった共通項は予想だにしなかったもの。

時を同じくして弁護士の『二宮(亀梨和也)』が
「怪物の木こり」の姿をした暴漢に斧で襲われる。

一連の事件とは当然、直ぐに結びつくも、
その背景がどうにも(本人にも鑑賞者にも)判らない。


社会的な地位はあるものの、『二宮』の実態はサイコパス

自身の利益の為なら手段を択ばず、恩師であろうと平気で手にかけ、
やはりサイコパスの脳外科医『杉谷(染谷将太)』と結託、
邪魔者はとことん排除且つ、その過程でも愉悦を得る、
一挙両得の運命共同体


本作での警察機構は極めて優秀。
じわりじわりと真相に近付いて行く。

一見脈絡の無さそうな被害者たちの背景が明らかになり、
それが『二宮』への関係性へと繋がる。

三十年以上前の凄惨な事件を引きずり、
今に繋げる仕掛けと最終的に判る犯人は
さすがに読み切ることはできず。

かなり荒唐無稽であり
時としての無理筋はあるものの、
切れ目ない流れの中で
物語世界に没入していける。


また最近の邦画とは真逆の傾向、
言葉での説明を極力排し、
映像を繋げることで見せて行こうとの姿勢には共感できる。

『二宮』が襲われた後に
自分の財布から札を抜き取り、
むしゃむしゃと食べてしまうのはその好例。

深謀遠慮に後で気づき、驚いてしまうわけで。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


サイコパスを人為的に造ることができるのか?との疑問は別にして、
何かを契機に人間らしい心を取り戻した時にどう行動するかとの試行は面白い。

とは言え、ラストのシークエンスは、かなり消化不良。
裏の裏があれば、また別なのだが。