RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

スイート・マイホーム@TOHOシネマズ川崎 2023年9月2日(土)

封切り二日目。

席数112の【SCREEN8】の入りは四割ほど。

 

 

幾つかの告知では{ホラー}とされており、
怖いモノが嫌いな身としては鑑賞を逡巡。

とは言え『斎藤工』の
劇場向け長編の初監督作(たぶん)との天秤で期待の方が勝る。
オダギリジョー』の〔ある船頭の話(2019年)〕のような先例もあるし。

しかし観終われば、極めて正調な{サスペンス・スリラー}且つ{ミステリー}。
びくびくして損した気分とともに、
恐怖感を盛り上げる演出の数々には感心。


スポーツジムでインストラクターをする『賢二(窪田正孝)』と
妻の『ひとみ(蓮佛美沙子)』が自分達の家を建てようとするところから話は始まる。

モデルルームを見に行き、土地を買い、
施行会社を選定、設計の担当者も決まり、無事に竣工。
自分達の希望が叶った終の住まいと喜ぶ二人。
しかし住み始めて程なく、家そのものの違和感に気付く。


そこからは、今までのほのぼのとしたトーンが激しく転調。
もっとも、前段部でも不穏な空気は所々に挟み込まれてはいた。
さりげない音やちょっとした影、或いは風の揺らぎなどが、
それを指し示していたことが後々判るのだが。

この辺りの伏線の張り方は、成程巧い。


上手いと言えば『蓮佛美沙子』の演技が素晴らしい。
最初は幸せを、しかし次第に不安から恐怖へ、
最後は狂気に囚われる変化が出色の出来。


死体は幾つも転がり出し、
心理的にも追い詰められていく主人公たち。

ここでは過去のトラウマから
『賢二』が「閉所恐怖症」であることが一つのカギ。

この設定の効き加減は、たぶんに原作の手柄だろうか。
その遠因も、ちゃんと重要なエピソードに転化する手練れもあり。


物語りは、「フーダニット」と「ホワイダニット」を孕み終幕へと進むも、
怪しげと目する人物が相次いで亡くなってしまうので、
結末の見当がおぼろげについてしまう恨みがある。

結末を迎えれば、冒頭シーンが持つ二重の意味と
宅建設にまつわる始終ならではを利用する巧みさを理解。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


エンドロールを見ていると
「製作」の中に『福山雅治』の名を見つける。

まちがいなくご本人らしく、どうした所縁から?と
こちらの方も気になる。