RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

52ヘルツのクジラたち@TOHOシネマズ日比谷 2024年3月2日(土)

封切り二日目。

席数249の【SCREEN9】の入りは五割ほど。

 

 

『町田そのこ』の小説は
既刊十一冊のうち七冊を読了。

自分にしては高比率も
一冊を除けばタイトルを見るだけで
「ああ、こ~ゆ~内容だったよね」と
想起が可能。

その唯一の例外が標題作。
ハードカバーで読んでいるにもかかわらず、
ほとんど記憶に残っていない体たらく。

ただ、
イマらしいイシューをよくまあこれだけ大量に詰め込んだよな、との印象と
なんでこれが「本屋大賞」なの?との疑問だけは強く残っている。

前者であればかなり手垢の付いた事象の数々だし、
後者なら〔博士の愛した数式〕のような斬新さも、
かがみの孤城〕のような仕掛けも無い。

とは言え原作と映像化された作品は別物。
料理の仕方によってとんでもない秀作に化けることはあり、
そこは〔八日目の蟬(2011年映画化/2008年本屋大賞の第6位)〕を世に出した
成島出』の手腕に期待なのだが。


ある種、白紙の状態で鑑賞に臨むも
時として嘗て読んだ時の記憶がぱらぱらと甦ってしまうのは困りもの。

過去との往還はありつつも、
ストーリー自体はほぼ一本道なものだから
印象的な出来事ほどぱっと想起され
先の展開があっさりと読めてしまう
(いや、そうでなくとも、ミステリ的要素は弱めか)。

盛り込まれている問題のインパクトは強いものの、
一つ一つを見ればあまりにありがちで
新奇さはさらさらない。


とは言え、これだけの数の強烈なエピソードを盛り込み、
各パートを有機的に関連付け、
一つの物語りに纏め込む力業には驚嘆。

各種の受賞には
そうしたことが評価されたのか、と
今更ながら思わぬでもない。

映像化の「功」の力か。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


主人公を進んで救う無私の人物が
タイミング良く次々と現れる展開には鼻白む。

また、不義理をされてもあっさり寛容するだけの魅力が
彼女に有るかと言えば甚だ疑問で
主体性の弱い造形にはあまり共感できぬ。

意志を強固に表わす結末の落着にしても、
子供が子供を育てるようにしか見えず、
彼女と彼の将来に幸あれとは思うものの、果たして?
との不安を強く抱かせるもの。

『三島貴瑚(杉咲花)』の声なき声を掬い上げた『岡田安吾(志尊淳)』も
実際は52Hzの声を上げており、
『貴瑚』がそれに感応できなかったのはあまりに悲しい。

結末は、単にその贖罪に見えてしまう。

 

How to face our problems@ヒルサイドフォーラム 2024年3月1日(金)

ヒルサイドテラスF棟】で
会期2月27日(火)~3月2日(土)と
たった五日間の開催。
加えて開場時間は15:00-20:00(最終日は11:00~)と
かなり通常とは外れている。


オマケに主催は
PwCコンサルティング合同会社」。
なかなか面白いコトをやるなぁと思う。

 


展示されているのは六名の作品。

エントランス右手には『アルフレド・ジャー』のネオン管を加工したもの。
目に入る文字は「BE AFRAID OF THE ENORMITY OF THE POSSIBLE」。

『潘逸舟』の作品は大きな二つのスクリーンに中州が映る。
片方は満潮で中州は水の下に隠れている。
もう一つのスクリーンでは中州の上で三人が椅子取りゲームをしている。
それが作品タイトルの〔MUSICAL CHAIRS〕
しかし使われているのは椅子ではなく、大きな石なのが
なんとも・・・・。

全体を俯瞰した時に
イマイマの歪な世界の状況を感じるアートの数々。


いかにも同社らしい
問題意識に溢れるセレクション。

大志学園卒業制作展@佐藤美術館/ACT(アートコンプレックスセンター) 2024年2月24日(土)

昨年もこうした仕切りだったろうか。
「第二会場」が設定されていることを知ったのは当日のこと。

 

 

展示内容は【4・5階】が”武蔵野学芸専門学校”、
【3階】が”早稲田国際ビジネスカレッジデザイン科総合学科”、
【ACT】が”専門学校在籍生、高等課程の卒業・修了制作展”。

上階から順に、更には徒歩移動をして観させていただくが、
心に響く作品には出会えず。


会期は~3月3日(日)まで。


東京五美術大学 連合卒業・修了制作展@国立新美術館 2024年2月24日(土)

 

もう47回目との案内。

五つの大学は
女子美術大学東京造形大学日本大学芸術学部・武蔵野美術大学多摩美術大学」。

展示室は【1A~D・2A~D】と屋外。

有料で開催されている”マティス 自由なフォルム”が隅に追いやられるほどの勢い。


会場内はかなりの入りで、知己は勿論
高校生の集団鑑賞も。

スマホやカメラを向ける人も
更に多くなっている。


そういったことの反映だろうか。
ひと昔前よりも、「映え」や「カワイイ」を意識した作品が、
特に立体やインスタレーション、平面でもイラスト系では増えている印象。

中にはモチーフがまるっかぶりのものもあり、
ちょっと拍子抜けをしてしまう。

こうした傾向は今後も続くのだろうか。


もう一つ驚いたのは警備員の多さ。
直近のアーチストに対するストーカー等の行為が背景にあるのだろうか、
例えば【1A】のスペース内でも常時二人くらいが巡回している。

元々、そういった方々とは無縁の場所だったことを勘案すると
かなりの違和感。

まぁ、このご時世では
仕方ないとも言えるが・・・・。

 

会期は~3月3日(日)まで。

POSTERS×FURNITURES@BAG-Brillia Art Gallery- 2024年2月11日(日)

「ポスターと家具の競演」とも書かれている。

 

 

【BAG+1】はそのものの展示、
【BAG+2】は関連するものも含め
ポスターの展示と即売。


やはり、タイトルにも示されている通り、
【BAG+1】での展示は面白い。

家具とそれに合わせたポスター、
加えてウイットに富んだ一言が
小さなカードにしたためられ
さりげなく置かれている。

三位が一体となり
思わずニヤリとする数々がどうにも楽しい。

家具は既製品だし、
ポスターも嘗てどこかで観た記憶のある既存品。

それを絶妙の間で結び付けるキーワードの絶妙さ。


会期は~3月31日(日)まで。


コヴェナント 約束の救出@TOHOシネマズ日比谷 2024年2月23日(日)

封切り三日目。

席数120の【SCREEN8】の入りは八割ほど。

 

 

「9.11同時多発テロ」発生後、
アフガニスタンに軍事介入したアメリカだが戦況は泥沼化、
二十年近く経っても終結の糸口は見いだせずにいた。

そして2018年。
ターリバーンの武器・弾薬を探索する部隊の軍曹『ジョン・キンリー(ジェイク・ジレンホール)』は
新たな通訳として『アーメッド(ダール・サリム)』を雇い入れる。
彼には成功報酬として、家族ともども米国ビザの発給が約束されていた。

しかし作戦の途中で二人を残して部隊は全滅。
深手を負った『キンリー』を連れ、『アーメッド』は米軍基地を目指す。

この逃避行の過程が相応の時間を割いて描かれる。

『アーメッド』は通訳だけではなく、戦闘員としても有能。
一方で上官の指図にも、自身が納得せねば従わぬ頑固さもあり。

が、結局は、彼の多くの機転と献身により『キンリー』は救われるのだが、
自分の身を危険に曝してまで米兵を救った理由は何か。
単に報酬が目当てなのか。

『アーメッド』は多くを語ることはなく
その心の内は判らない。


ここで思い出すのは
実話を基にした〔タクシー運転手 約束は海を越えて(2017年)〕。

高価な報酬目当てだったタクシー運転手が
雇い主のジャーナリストと行動を共にすることで
次第にその使命を理解し、最後は我が身の危険を顧みず
追っ手からの逃避を繰り広げる。

では彼のモチベーションも、単に高額の運賃だけだったろうか。


物語りの後半では、助け助けられの立場が逆転。

本国に戻り体も回復した『キンリー』だが、
米国が約束を履行しなかったため
『アーメッド』がターリバーンから懸賞金を掛けられ
今だアフガニスタン国内に潜伏していることを知る。

PTSDによるフラッシュバックに悩まされ、
『アーメッド』のビザを取るための交渉も思いに任せぬことから酒浸りになりながらも
私財を投げ打ち、再びアフガニスタンに赴く決意を固める。

このパートでは『キンリー』の心象は
かなり克明に描写される。


〔ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ(1998年)〕や
シャーロック・ホームズ(2009年)〕の
撮影・編集で独特の文体を編み出した『ガイ・リッチー』だが
あまりに繰り返され過ぎて最近では辟易気味だったのも事実。

それを本作ではぴたりと封印、
かなりオーソドックスな撮り方に終始しており、
それが却ってリアルな戦場の空気を醸すのに奏功
(もっとも、BGMについては
変わらず『ガイ・リッチー』節)。


戦場を後にするラストシーンは、
プラトーン(1986年)〕と近似のシチュエーションも
カタルシスの点では段違い。

背景には、人を裏切らない「絆」の存在があるからだろう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


エンドタイトル前のテロップでは
真逆の現状が語られる。

2021年のアメリカ軍撤退時には、
通訳として協力したアフガニスタン人が(ビザを発給されることなく)
そのまま取り残されたため、多くは殺害または今でも潜伏しているとの実態。

実際の写真も映されるが、
彼等の顔にマスキングがされているのは
身元を明かすのを恐れた処理と思われ。

協力者を顧みない国家は、信ずるに足る存在なのか、と
強く投げ掛ける。

 

 

鉄道写真家 南正時作品展@鉄道歴史展示室 2024年2月11日(日)

後期の会期は1月30日(火)~3月24日(日)。

 

ブルートレイン夢の旅路へ”とのタイトル通り、
写真を中心に「ブルトレ」に関する文物も置かれているのは「前期」の通り。


この中で印象的な一枚が。

夜の暗闇の中の「ブルトレ」の光の軌跡、
天空には長い尾を引く「ヘール・ボップ彗星」。

ただ残念なことに、
一時に撮ったものではなくネガ合成だと言う。

これがリアルな一葉だったらどんなに素晴らしかろう、と
つくづく思う。


訪問当日は団体客が訪れており、
会場内はけっこうな混雑。

基本、空いている場所との認識も、
こうしたこともあるんだねぇ。