RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

居眠り磐音@109シネマズ木場 2019年5月19日(日)

封切り三日目。

席数119の【シアター7】の入りは六割ほど。

時代劇ということもあり、
客層はやはり老齢に振れている。


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江戸深川の金兵衛長屋に住み
鰻屋の『宮戸川』で鰻を割いて日銭を稼ぐ
豊後関前藩の浪人『坂崎磐音(松坂桃李)』。

元々は藩の重臣の嫡男であった彼が
身分を捨て何故に今の境遇に甘んじているのか。

その顛末を描く、先ずは名刺代わりとなる一本。


本作の出来の良さ、そして評価の高さから
本来なら続編の制作を期待すべきも、何分にも原作は全51巻の大長編。

連続ドラマなら兎も角、映画シリーズにはとてもムリ。

どうした意図での今回の映画化?と訝りはしつつ、それでも
良作を観られたことの喜びの方が先に立つ。


直近でも〔多十郎殉愛記〕〔サムライマラソン〕と時代物にカテゴライズされる幾つかはあり乍ら
煽りの文句に惹かれて観はしたものの、共に制作サイドの自己満足で、
何れもがとってもがっかりのケース。

それに比して本作は殺陣の外連味に目新しさは無く、場数も必要最低限も
ドラマのパートを盛り立てる為のスパイスとして十全に機能している。


何よりも、勧善懲悪が明確に描き分けられている分かり易さ。

悪徳両替商『阿波屋有楽斎』を演じた『柄本明』の憎々しさは特筆もの。
一方で今際の際に今後の『磐音』の身に起こることについて
核心を突く予言をする重要な役割だったりもするのだが。

また『磐音』をなにくれとなく気に掛ける長屋の大家『金兵衛(中村梅雀)』と
娘の『おこん(木村文乃)』の存在も、良い予感しかしない温かみのある風情。


藩の中での新旧の争いと、幕府というより大きな舞台での新旧の諍い、
それにまつわる陰謀に翻弄されながらも抗う主人公と周囲の人々を見守る
作者の視線はどこまでも温かい。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


原作・脚本・役者がきちんとしていれば
これだけの筋の善い娯楽映画ができるとの恒例。

制作サイドは濫造ではなく、良質作品の掘り起こしに血道を上げて頂きたい。