RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

僕たちのラストステージ@109シネマズ川崎 2019年4月23日(火)

封切り五日目。

席数89の【シアター9】の入りは三割ほど。


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日本でも「極楽コンビ」として人気のあった
『ローレル&ハーディ』の主な活動時期は戦前~戦中。

なので彼等が主演の映画をキチンと観ているのは、
よほどの老齢者か好事家の何れかと思われ。


そういった予備知識も無しに本作を観ると、
随分とほのぼとしたコメディとの印象を受けるが
しかし、『小林信彦』の〔世界の喜劇人〕を読むと、
全盛期の彼等の凄まじさに驚いてしまう
例えば、新築の家を丸ごと一棟破壊し尽くしてしまうとか、
とんでもないスラップスティックコメディ。


もっとも舞台上ではそこまでの激しさはムリなので
本作で描かれたような
繰り返しのギャグやおかしな仕草・表情で笑いを取り
また観客もそれを受け入れた時代だったのだろう。

世知辛い現代からすると随分とのんびりしているし
時として面白さが伝わらない部分もありつつ
見続けているとじんわりと可笑しさがこみ上げて来る
なんとも不思議な空気感。


そんな二人も人生の黄昏期に向かっては
随分と手元不如意だったと聞いている。

その苦境を打破する為の、復活を掛けたイギリス公演が
本編の舞台。

そこでのてんやわんやを、軽妙なやりとりを含め
テンポ良く描く。

いみじくも映画内の台詞にあるように
コント・ギャグと素の状態の区別がつかないくらい
会話自体が笑いに満ちている、もっとも
彼等の年齢も考慮すれば
ペーソスも感じられはする。


一度「赤い靴」を履いてしまった少女は
死ぬまで踊り続ける呪いを掛けられてしまう。

同様にショービズの世界に身を投じた彼等も、
今となっては他の仕事に就くわけには行かず、踊り続けるしかない。

時としての小さな諍いがありつつも
長年培って来た鞘に収まる一連の経緯は
ココロがふうわりと暖かくなる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


スクリーン上に繰り出された幾つかのギャグに
当日の観客もそこそこ反応していたことには正直驚く。

客層は確かに高齢にふれてはいたけれど、
まだまだこういったテイストが受け入れられる下地があるのだなぁ、もっとも
本国での高評価に比して、本邦での評価は著しく低いのだが。