RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

THE GUILTY/ギルティ@TOHOシネマズ日本橋 2019年3月14日(木)

封切り三週目に突入。

席数213の【SCREEN6】の入りは四割ほど。


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フライヤー等の事前情報では
「緊急通報司令室のオペレーターとして勤務している警察官が
誘拐された女性からの電話から聞こえる”音”だけを頼りに
事件を解決しようとする異色のサスペンス」とのことだが
正直「?」。

音だけを頼りに事件を解決するのは、小説ではあるものの
盲目の音響技師が活躍する『デイヴィッド・ローン』による
〔音の手がかり(1993年)〕〔音に向かって撃て(1994年)〕が嚆矢だろう。


映画でも、やや状況は異なるものの〔リミット(2010年)〕、
或いは状況そのものも酷似している〔ザ・コール 緊急通報指令室(2013年)〕がある。

これだけの前例があることから設定そのものは、さして異色でも珍しくもない。

しかし後者の映画は評価的にはイマイチで、ではなぜ本作はそれほどの激賞なのかが不思議で
鑑賞に臨んだのが・・・・。


緊急通報司令室で黙々と電話対応する『ヤコブ・セーダーグレン』。

元々は現場の警官であったものが、何か失敗でもしたのだろうか、
内勤での仕事に甘んじている。

普段でも掛かって来るようなコールが幾つかあり、彼はそれらを卒なくこなす。

これが所謂「序」の部分。


ところが、ある女性から掛かって来た電話の内容は急を告げるもの。

そこからは次第にサスペンスの色合いが濃くなって行く。
ストーリーは「破」へと突入する。


彼が手掛かりとするのは、関係者との会話。

なので”音”がカギになっているわけではなく、
惹句は完全なミスリード


幾つかの警察署や外回り時代の相棒に指示を出し、
ヤコブ』は解決に向かって尽力をする。

舞台はコールセンターから一歩も外に出ることはなく
ワンシチュエーションものの典型的な造り。


が、あまりにも会話に頼り過ぎた結果が
後で手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。

それが「急」の部分。


九十分弱の短い尺の中に物語りの構成要素をキチンと盛り込み、
何よりもリアルタイムで進行させながら伏線を張り、
それをちゃんと回収する脚本の冴え。

どんでん返しも用意され、ストリーテリングの素晴らしさ。
緩急を付けつつ、沈黙による 間 の設定も絶妙。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


冒頭に提示された『ヤコブ』の現在の境遇のについてもおいおいと明らかに。

そして今回の事件がその救済になる可能性も暗示され、一篇は余韻を残し終わる。

その先を想像するのは観客に任されている。