RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

女王陛下のお気に入り@109シネマズ二子玉川 2019年2月17日(日)

封切り三日目。

席数155の【シアター1】は満員の盛況。


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史実を下敷きにしたドラマではありつつ、やはり
1700年代初頭の英国史の知識が有った方がより楽しめるかも。

かく言う自分は日本史は受験科目だったためさんざん勉強したものの、
西洋史の方はからっきしで・・・・。


十二年に渡って在位した『アン女王(オリヴィア・コールマン)』、
その幼馴染であり且つ寵愛を受けた宮廷女官『サラ(レイチェル・ワイズ)』、
やがては『サラ』に取って代わる従妹の『アビゲイルエマ・ストーン)』、
三人による複数年の愛憎の物語り。

事実関係やディテールはさておき、
恩顧を受けることになった次第と
その先で何がしたかったのかが、
重要なポイント。


『サラ』は女王を自分の管理下に置き、
権力の代弁者として君臨する。

しかし元々は、
躰が弱って行く親友を助けたい思いからかもしれないし、
夫の栄達を求めることが背景にあったかもしれない。


一方、後釜に座った『アビゲイル』は
地位を簒奪した後は、その維持に汲々とする。

それは『サラ』に反発をし、女王の愛情を勝ち得ること自体がゴールであり、
以降のビジョンが何もない空虚な状態であったから。

成り上がる過程では従姉のロールモデルを模倣し増幅するだけで良かったのが
いざそうなってからは、政治自体にも関心がない上に、
先の目標が見えなくなってしまう。


もっとも心根の部分とは別に
三人の女性の濃密な関係と心の揺らぎ、
弄する手管の中身が本編の見所の一つ。

対比するように提示される、
大所高所からの説を述べながら
庶民の困窮を顧みず浪費に耽る当時の男性支配層の腐敗(あ、今でも一緒か)に呆れながらも
繰り広げられる女性同士のやり取りには慄然とする。

アビゲイル』も結局は
侮蔑していた男達と同じレベルまで堕してしまうのも示唆的。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


「虎の威を借る狐」は
自分を追い落とすものの存在に常に恐々とする。

加えて、主である「虎」が居なくなることも
権力の失墜に直結するのも
洋の東西を問わず歴史の普遍的な真実。