RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

アウト&アウト@チネチッタ川崎 2018年11月23日(金)

封切り八日目。

席数107の【CINE1】は満員の盛況。


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いや~笑った笑った。

暴力団を(たぶん)円満に抜け、探偵事務所を開いている強面の『矢能政男(遠藤憲一)』と、
彼にぴったりと寄り添っている少女の『栞(白鳥玉季)』が主たる登場人物。

彼がこんな稼業をしている理由、そして何故
赤の他人の彼女と一緒に暮らしているのかは
劇中でおいおい語られるも、
二人の会話はまるっきり、古女房とその尻に敷かれまくっている亭主のそれ。

試しに『栞』の発話だけを切り出してみると良い。互いの関係が瞭然になる。
『矢能』は全く彼女に逆らえないのだ。

外への強権とはまるっきり真逆の態度が、
なんとも言えぬ可笑しさを生む。


そんな柔らかい関係を主軸に据えながらも、物語の流れは至って生硬。

望まぬ仕事の依頼から殺人事件に巻き込まれた主人公が
身の潔白を晴らすため、過去に築いた人脈を駆使し
真相に迫って行く。

そのやり口は相当に荒っぽいし、時として
人を人とも思わぬような態度を取るにもかかわらず
周囲が『矢能』を助けることを厭わないのは
恩義が廻り回って自己に戻ってくることを弁えているのと
先に挙げた『栞』への処し方が彼の本質であるのを知っているからだろう。

取り巻く人物達のキャラも相当に立っており、やはり都度都度の笑いも付加される。


二組の男女の思いが次の新たな局面への契機となり、
事件は輻輳しながら終焉へと向かって行く。

ただ如何せん110分程度の尺では、説明不足になる部分がちらほらで
どうにも惜しい。言葉に頼る場面が多すぎ。

加えて監督が妙に大仰なカメラワークをするのもやや鼻につく。

しかし何れもが小さな瑕疵。
設定の新奇さと、全体を貫く疾走感とで
最後まで「早く早く!次はどうなるの」との
期待に後押しされる高揚感が止むことはない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


〔探偵はBARにいる〕が出て来た時
その斬新さの評価と、続編の予見をしたわけだけど
(その後の劣化は残念)、
本作も全く同様で、今までないスタイルを生み出している。

よって当然のコトながら、二作目以降の制作を激しく希望。

そちらでは本編で語られ尽くされなかった
『矢能』の過去がよりきっちりと描かれるのだろうし。