RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

日日是好日@109シネマズ川崎 2018年10月20日(土)

封切り八日目。

席数118の【シアター5】の入りは満員。

客層は高齢者が圧倒的。


100分程度の尺の小品。

内容も、折々の出来事が淡々と積み重ねられるだけで
ドラマチックな展開はほぼ無い。

本来であればこれほどの集客は無かったろうに。

偏に、主要な登場人物を演じた『樹木希林』が公開直前に亡くなったことと
道家元の応援によるものが大だろう。

それでも、その佇まいの美しさに魅入ってしまうのは
間違いのないところ。


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ひょんなことからお茶のお稽古に通うことになった
『典子(黒木華)』の十二年のクロニクル。

最初は一緒に通っていた従姉の『美智子(多部未華子)』が
結婚を機に離れていったり、
自身の就職や恋、身内の死などの変化は当然あるものの
その度ごとにお茶を点て服することがよすがとなって行く。


一見、彼女が主人公の様にも見えるけど
オハナシの主体となるのは
お茶の稽古をする場所そのもの。

窓の外の移ろいは美しい。
二十四節気毎に鮮やかな変化を見せる。

茶菓子にさえそれは現れる。

時々に応じて替えられる床の間の掛け軸、
生けられる花や花器も同様。

古き良き、とはあまりにも手垢の付いた表現だけれど
隅々にまで日本人の心根が行き届いている。


お茶の稽古のシーンが全体の場面の殆どを占め
繰り返し描かれる理由はそこにある。

それを観ているだけで、気持ちが温かくなって来る。


劇中引き合いに出される『フェリーニ』の〔道〕は
初見では解らなくとも環境が変わり年代を経れば
理解に到る場合があるとの寓意だろうが、
我々は本作に『小津』が好んで描いた
何気ない日常の繰り返しによる居住いの善さを見る。

主人公の名前もたまさか『のりこ』だしな。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


随分と前に亡くなった伯母がお茶の師範の免状を持っていたことを思い出す。

稽古をとは思わなかったけれど
一連の流れだけでも教えて貰っておけば、と
今更ながらに悔やまれる。

それがあるだけで
美の視点についても
今とは異なる観方ができただろうに。