RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

空飛ぶタイヤ@TOHOシネマズ錦糸町 2018年6月17日(日)

封切り三日目。

席数172の【SCREEN1】は満員の盛況。


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恥ずかしながら、『池井戸潤』の著作は一冊たりとて読んでおらず、
加えてそれを原作にしたテレビドラマすら一本も見たことがないとゆ~、
世間様の潮流からはまるっきり離れた生活をしている。

なのに本作に足を運んだのは、偏に予告編の出来が良かったから。

今を時めくイケメンが三人揃っていることなど
ワタクシ的にはなんの関係もない。


映画的な表現は頗るこなれている。

緊迫感を醸す場面でのアップの多用。

主要なキャラクターのヒエラルキー
食事の場面だけで再認識させてしまう構成力。

多くの登場人物を端的に整理し、エピソードともども
判りやすく見せる筋立て。

場面間の繋ぎに、ややの性急さと
挿話毎に厚みが無いことの恨みはあるものの
総じて満足の行く仕上がり。


しかしそれとは別に、物語自体が内包する
テーマがずしりと重く、
鑑賞し終わった途端にどっと疲れが出てしまう。

なぜなら二時間尺のこの一本の中に
会社組織が包含する矛盾や理不尽がてんこ盛りに詰め込まれているから。

一つ大企業メーカーだけにとどまらず、
中小企業であれ、銀行であれ、警察であれ、お国の機関であれ、
そして社会の木鐸であるはずのメディアであれ、
要は営利や保身のための、或いは会社自体を維持するための
一つの組織体でしかないことが嫌というほどぶちまけられる。


上っ面だけであれば、資力も財力も無い中小企業が
その真逆である大企業に正攻法で立ち向かい
最後には快哉を叫ぶ一篇とも見えるが、
実態はそれほど単純ではない。

嫌疑を掛けられた運送会社の社長『赤松(長瀬智也)』が最初に取った態度はどうであったか。

或いは、「ホープ自動車」の社員『沢田(ディーン・フジオカ)』の行動は
単純に義憤に裏打ちされたものだけであったか。

此処での登場人物の多くは、正義よりも
自分を裏切った会社への意趣返し、または、上役を引きずり下ろし
自身がより上位へ昇るための手段として都合よく事件を利用しているだけ。

それは真実を隠蔽する側も同様で、胸糞が悪くなる。


しかし観ている側はふと最初のテーゼに立ち戻る。
自分ならどうか、と。

此処には、おおよそ思いつく限りの労働者の類型が詰め込まれているから。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


原作を読んだ知人によれば、印象的なエピソードはもっと多量にあり、
それらの殆どが省かれているのは勿体ない。
連続ドラマでやった方が良かったのでは、との感想。

でもねぇ、現実の事件からインスパイアされた内容は
映像化することで更にリアルに。

ちょっと考えれば、直ぐにでも実際の企業名が想起できてしまうんだから
スポンサーが付くまいよ、と
思ってしまう。

まぁ実際、「WOWOW」はドラマ化しているんだけど。