RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

泥棒役者@TOHOシネマズ 新宿 2017年12月1日(金)

封切り二週目。

席数73の【SCREEN12】の入りは八割ほど。

中高年の女性の姿が目立つが
主演の男優目当てか、それとも『市村正親』のファンだったりして。


イメージ 1



失敗することの多い演劇作品の映画化も、
こと本作に限っては『キサラギ』同様上々の出来。

はばはぼ室内劇であること、登場人物が過少なのも近似。

ただ先の作品は、
推理が二転三転することで緊張感のあるサスペンスが生じていたのに対し、
こちらは勘違いが積み重なることで生じるズレによるサスペンスが楽しさを生み、
哄笑が次々に繋がる違いはあるけれど。


少年院時代の悪い仲間に脅され、窃盗に入った小さな洋館。
住人は不在と思っていたのに、不意にばったりと出くわしてしまう。

咄嗟に、家人の勝手な勘違いに話しを合わせたは良いが
予期せぬ訪問者がその後も続き、
都度その場凌ぎをして行く内に『大貫はじめ(丸山隆平)』は
複数の人物を演じ分けなければいけない次第となってしまう。


家の主人で絵本作家の『前園俊太郎(市村正親)』と、
担当編集者の『奥江里子(石橋杏奈)』と、
教材セールスの『轟良介(ユースケ・サンタマリア)』と、
『はじめ』は夫々異なる立場で相対し、
登場人物同士ではハナシがあっているものの、
全てが俯瞰できている観客の側は ズレ が判っているので
可笑しくて堪らない。

そしてそのシチュエーションは
次第にエスカレーションして行くかと思いきや・・・・。


笑わせて、はらはらどきどきさせて、最後はちょいっとほろりとさせる
脚本の流れが素晴らしい。

幾つかの伏線もきちんと張られ、納得感のある落としどころにも
じんと来る。


舞台をそのまま転用したとも思われるカット繋ぎ、
或いは、カメラが登場人物の間をふわふわと漂うように動く長廻しのシーンも
やはり演劇っぽいし、違う意味での緊張感も生む。


総合的に見ても極めて良作。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


エンドロールが終わるまで、
席を立たぬことをおススメ。

二人の役者が、ある映画作品の役名そのままでカメオ出演している。

監督の過去作を観ている人にとっては
楽しい余禄。