RollingStoneGathersNoMoss文化部

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ハクソー・リッジ@TOHOシネマズ日本橋 2017年6月24日(土)

本日初日。

席数290の【SCREEN8】は九割方の埋まり具合。


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真珠湾攻撃」に強い義憤を感じ、入隊はしたものの
その属している宗派と、幼い頃の体験から
武器に触れることや戦闘そのものを拒否。

衛生兵として参戦し、多くの兵士の命を救った
『デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)』を扱った実話。


そして物語の舞台は、なんと第二次大戦末期の「沖縄」で、
ハクソー・リッジ」=「前田高地」と判ると
本作への見方が、また少し違って来る。

それにしてもアメリカ映画が「沖縄戦」を描いたのは
これが初めてじゃあないだろうか。


全編の四割ほどの時間を使い、
なぜこのような人物が生まれたのか、
そして入隊後も変らぬスタンスのため、
一時は除隊或いは収監の危機に見舞われる
一連のエピソードが紡がれる。

安息日が土曜の宗派って
どれくらいの人数なんだよってハナシなんだが、
最初は反発しつつも
結果的にはそれらもまるっと飲み込んでしまえる懐の深さが
アメリカという国の強さの源泉であるのかも。

対する日本兵は死をも恐れぬ一枚岩として描かれ、
敵国からも「兵は一流」と評された軍隊そのままの描写も
逆にこの多様性の無さが、長い戦闘期間を勘案した時に
どう作用したのかなと、思ったりもする。


一回の戦闘で多くの兵士を「あと一人、もう一人」と救い続ける姿は、
ヨブ記」では神からの試練として与えられたものが、
彼は求めてその渦中に入って行く様で、
次々と増えて行く傷は、聖痕さながら。
先に挙げたキリスト教の倫理観が
強く背景にあることを思わせる。


物語の主人公は
もう十年以上も前に亡くなっている。

しかし本編中では、晩年の彼が
往時について回顧するドキュメンタリー映像が流される。

多くの命を救ったことでの彼の国での評価が
戦後六十年を過ぎても
色褪せないものであることを
あらためて知ることになる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


喧伝されている戦闘シーンの凄まじさは
全くその通り。

飛び交う弾丸の音、
火炎放射器に焼かれる兵士、
ばらばらになり飛び散る肉体、
そして敵味方さえ判然としない組んず解れつの白兵戦。


が、その場面を観ていた時に
一枚の画の情景が頭に浮かんで来た。

藤田嗣治』の〔アッツ島玉砕〕。

史実とは異なってはいるものの
彼はこれを想像だけで描いたと言う。


しかし眼前に展開されている情景は
まさしくそれと瓜二つ。

天才の想像力には、心底、慄然とさせられる。