RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

マンチェスター・バイ・ザ・シー@TOHOシネマズ錦糸町 2017年6月14日(水)

封切りからはや一ヶ月。

席数113の【SCREEN8】の入りは二割ほど


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物語の舞台
マンチェスター(・バイ・ザ・シー)」は
アメリカ大陸北東部、マサチューセッツ州に在る
人口五千人ほどの小さな町。

こんな規模だから
住人の多くは顔見知りで、
些細な噂でも瞬く間に町中に広まってしまう。

住むのに息苦しささえ感じるだろうし、
一旦外に出て舞い戻って来た人間には
必ずしも居心地の良い場所ではないかもしれない。


主人公の『リー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)』は故郷を離れ
車で一時間半ほどの州都ボストンに住む。

そこでの生業は便利屋を兼務したマンションの管理人。
住人への応対の刺々しさは、
四棟を独りで受け持つ多忙さのせいばかりでは
必ずしもないようだ。


そんな折に、故郷に住む兄の訃報が届く。
元々、不治の病を患ってはいたものの、
その知らせはあまりに急であった。

取るものもとりあえず戻った彼を待ち受けていたのは、
独り残された甥の後見人を任せたいとの兄の遺言。

戸惑う『リー』。
なぜなら、彼にとっての故郷は痛切な蟠りのある場所で、
そこでの暮らしは到底考えられないものだったから。


なんとも、胸を掻き毟られるような哀切に満ちた一本。

過去に実際に何が起きたのかは、
幾つか切返される短いシーンを繋ぎ合わせることで
追々と理解はされてくる。

しかし、人の口には常に尾鰭が付き、
町の中に広まっている噂は、起きたコトの本質を
語るものではけしてない。

もっとも、主人公が町を出た理由は
周囲の不理解にあるわけではなく、
自身の心が波立つせいだし、
ボストンで暮らすことで
過去の呪縛から解き放たれているかと言えば
まりっきりそうでないのは先に触れた通り。


予期せぬ事情により、戻りたくない故郷に足を踏み入れ、
未成年の甥に代わり幾多の雑務をこなすうちに、
多くの知己とも再会する。

或いは、イマイマの高校生くらいの
多くの若者と触れ合ううちに、
彼のささくれだった心は寛解するのだろうか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


元々、誰の責とも断ぜられない事故でも、
世間は誰かのせいにしたいものだし
当事者間では尚更だろう。

しかし何カ月かを町で過ごすうちに、
頑なだった気持ちが解けるエピソードや
断絶していた関係が次第に繋がって行く瞬間が
微かに語られる。

それらは、冬の季節に始まった物語が
春を迎える時期に終わりを迎えるように
観る側の心にも、ほんのりと暖かい希望を灯す。

それこそが、亡くなった兄が遺言に託した
真の思いだったのかもしれない。