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絵画は告発する/板橋の日本画@板橋区立美術館 2017年5月4日(木)

前者は「館蔵品展」、
後者は「特別展示」。

毎年、この時期になると
決まった様に先の大戦を反芻する展示が行われる。

来場者は其処に、標題館のキュレーターの矜持を感じる。


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戦中・戦後に描かれた作品を観れば
厭世的な、或いは窮屈な空気は十分に伝わって来る。

加えて今回は当時の資料も多く展示されているので
画布を含む画材も配給性になり、
切符一枚一枚との交換だったことも理解される。

もっとも、当時の軍部に恭順の姿勢を見せれば
それなりの便宜は図られたんだろうけど。


ただ例えば『難波香久三』の〔蒋介石よ何処へ行く〕を前にした時に
1939年との制作年を勘案し、どう解釈すれば良いのかは判断に迷うところで
ここいら辺は何らかの解説も欲しかった。

それは『国吉康雄』の〔He's the King〕も同様で、
描かれている雄渾な雄鶏は普通フランスの象徴だけど
1947年との制作年を考慮すると、正しくない気がする。
どう解釈すれば良いのだろう、とか。


一方、純粋に絵画として観た時に
当該館の所蔵品の中でもかなりお気に入りの『渡辺武』の〔風化〕と
『石井新三郎』の〔作品〕は似たモチーフを
『堀田操』の〔断章〕は近似のテイストを
何れも感じるのは面白い。


”板橋の日本画”はなにも画題が「板橋」に関連しているわけではなく、
同館が所蔵している、との意。

なので『平山郁夫』が「五重塔」を描いた
『結因の銀華』のような作品もある。

並んでいる数が多いのは『佐藤太清』だが、
眼が吸い寄せられたのは『西沢笛畝』の〔毓〕で、
どうやら「はぐくむ」と読むらしいのだが、
腹を空かせている雛鳥に、親鳥が今まさに餌を運んできた情景を
大小の三角形を組み合わせることでシャープに描いており、
しかし、題材が鳥なので羽毛のふわふわ感が相俟って、
ユニークな描写になっている。