RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

この世界の片隅に@109シネマズ川崎 2016年12月19日(月)

封切り一ヶ月を超え、上映館は拡大中という
稀有な一本。

席数121の【シアター5】の入りは八割ほど


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絵を画くのが好きな、ちょっと天然の娘
『すず(のん)』が広島から呉に嫁いで行く。

そうなることのきっかけは
所謂オハナシだけど、物語全体のほわんとしたカタチを体現する
上々のエピソードの積み重ね。

主人公のぼうっとしたような夢見がちな性格の造形は
実際の生活が悲惨なのにもかかわらず、
そうとは見せない表現に一役買っている。


しかし、彼女は、一見抜けている様で
節々の観察眼は鋭く、時々はっとするような真理を吐き
驚かされる。


ナイナイ尽くしの戦中下の暮しを
知恵と工夫で乗り切ろうとする庶民の強かさ。

或いは小さなコトにも喜びを見出し
日々を嫋やかに過ごそうとする往時の人々には
笑いと涙が入り混じって
画面が滲んでしまった。


しかし、そんな生活の中にも
否応なく戦火の影が紛れ込んで来る。

周囲の人々は言うに及ばず
それは本人にも浸蝕してしまう。

この一連の挿話は
胸が痛くなってしまうけど、
当時の人達は身内を亡くすことを含め
多かれ少なかれ辛い体験をしていたのだろう。

ただそれを想起させる出来事としては
あまりにも衝撃的過ぎる内容ではあるけれど、
戦争の悲惨さを描くのに、こんな語り口もあったのだと
改めて強い印象を受けるのだ。


本作の一番巧いところは、
意図的に年月を表示している点で、
なまじ我々は歴史を知っているものだから
それを見ては主人公の行動と照らし合わせ、
ああ、イマそれをやっちゃいけないんだ、とか
すぐにも終戦なんだから、このまま何も無く過ぎてくれ~、と
勝手にはらはらしたりやきもきしたりする。

計算ずくの表現なのだ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆☆。


エンドロールを最後まで見ると
『Makuake』と共に「クラウドファンディング」に賛同した人の名前が
流される。

此処にクレジットされた人達は、ある意味慧眼。