RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

聖の青春@109シネマズ川崎 2016年11月19日(土)

本日初日。

席数121の【シアター5】の入りは九割ほど。


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コンピュータ将棋のソフトウェアを開発している人の講演を
直近で聞いた。

第一の目標は「『羽生善治』に勝つこと」と
彼は言う。

イマイマの実力で、殆どのプロ棋士には
まずまず勝てるだろう。

それでも勝ちたい相手は、やはり『羽生』なのだと。

なので今回の「第2期叡王戦」で彼が敗れてしまったのは
頗る残念だ、と。

現時点でも三冠。しかし、この物語の当時は
史上初の七冠。

当代最上且つ、一番脂の乗り切っている棋士に勝ってこその価値なのだと
熱く語っていた。


そしてそれを命を削ってまで実践したのが
村山聖』。

ちょっとの将棋好きであれば
その容貌と夭折は記憶に残っているだろう。

本作はその『村山』の半生を『羽生』との
盤面上のやり取りをメインに描く。


物語は、ほぼ時系列に沿って展開され
最初の頃は、かなりのエキセントリックな振る舞いが
鼻に付き感情移入できない。

それが生来のモノなのか、環境によるのかは判然としない。

しかし師匠である『森信雄(リリー・フランキー)』は
献身的に『聖』の面倒を見る。

甘やかしている、とも思えるが、
弟子の才能を愛するが故だと飲み込めて来る。

が、その刺々しさが、次第に達観したかのように
穏やかになって行く。


出演している俳優陣が上出来。


松山ケンイチ』は体重を大きく増やし
『村山』に近い造形に。

『デ・ニーロ』を初めとした海外の役者は
この取り組みを躊躇なくこなすけれど、
日本の俳優でこれをするのは本当に立派だと思う。


『羽生』を演じた『東出昌大』も同様。

たぶん、体重を落として臨んだのではないか。

見掛けや仕草の節々が、そのままのコピーではなく
一旦、自身の身体に移植した上での表現になっているのが素晴らしい。


実際に勝負の場面で展開された丁々発止の指し手が
画面上で二人の役者で再現される。

そう言った意味で本作は
演技の醍醐味を十全に味わえる一作となっている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


周囲を巻き込みながら疾走した『村山聖』の三十年弱の半生は
しかし最後には爽快ささえ感じられる。

普通のヒトの半分以下の生涯で遺した彼の記憶は
けして軽いモノではない。