RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

われらが背きし者@TOHOシネマズシャンテ 2016年10月27日(木)

封切り七日目。

席数224の【CHANTER-1】の入りは七割ほど。


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ロンドン大学の「詩」の教授である『ペリー(ユアン・マクレガー)』が
妻と休暇で出かけたモロッコ
ロシアンマフィアの『ディマ』と知り合い
ある依頼を持ち掛けられる。

しかもそれは何の見返りも伴わないもので
それを律儀に履行したことにより『ペリー』は
マイフィアと「MI-6」が絡んだ抗争に巻き込まれて行く。

そう本作は、いみじくも登場人物自身が劇中で言及している様に
絵に描いた様な「巻き込まれ型」。
ヒッチコック』から連なる、英国の伝統芸と言っても良い。


『ル・カレ』の小説は、
タイトルに相当の意味を負わせているケースが多く、
甚だしい場合には、犯人そのものを指し示している場合も。

なので今回も「背きし者」は誰なんだと
目を皿の様にし、各シーンを頭の中できっちり整理しながら観ていると、
何のことはない、殆どの登場人物が「背きし者」。


主人公の『ペリー』ですら、妻に対して背徳行為をした過去がある。
彼に依頼を持ち掛ける『ディマ』はマフィアを裏切ろうとし、しかし
その原因は先代の後を継いだ息子が主要幹部に対して
非情な切り捨てを行ったこと、と
ぐるっと回っている。


「MI-6」にしても、マフィアを追い詰める『ヘクター』の動機は
今は議員となっている嘗ての上司に不正の疑惑があるためであり、且つ
自身の息子を貶めた意趣返しも目論むとゆ~・・・・。

オマケに彼も、本作戦につていては今の上司の許可を得ていない、
などなど。

あ”~もう、なにがなんだか。
その他にも、意識してなかったり
或いは小さな「裏切り」を数え上げればキリが無い。


こういった要素をぎゅっと纏めて、
しかもアクションシーンやドンパチはほぼ無しで
緊迫感を盛り上げて行く。

原作は大分な造りなのにも係わらず、
要点を上手く繕いながら比較的判り易く描いている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


ただ、百十分という短い尺の故か、
かなりの部分で行間を読む必要があるし、
オチも読めてしまうのは少々辛い。


また妻である『ゲイル(ナオミ・ハリス)』に対して
不貞をはたらいた『ペリー』が、突然に信義のヒトになってしまう、
その背景が良く判らなかったりもする。

もっとも、義に厚い夫婦の存在なくしては
このストーリーは成立しないし、それにより、
敏腕の法廷弁護士との設定の彼女が次第に事件にのめり込んで行く
とのサイドストーリーが生かせるのだが。