RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

グッドモーニングショー@109シネマズ木場 2016年10月10日(月)

封切り三日目。

席数235の【シアター1】の入りは五割ほど。


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予告編を見た時には、
てっきりこれの焼き直し、かとも思った。

本編中での番組ジャックは、片やスタジオ内、
もう片方は事件が起きている現場でとの違いはある。

ただどちらも、ショーのメインキャスターが囚われてしまうのは同じ。
オマケに、真実を表に出したいとの、
メディアに携わる人間特有の共通項も描かれる。

ただ封切りのタイミングを勘案すると
たまたま似通った企画がほぼ同時期に発案されたんだろうと
善意に解釈する。


テレビの制作現場を実際に見たことはないけれど、
おそらくはここで描かれている通りなのだろう。

やはりテレビ出身の『君塚』さんならではの
微に入り細に入った描写の数々。

ディテールに凝っているので本番前~本番中の緊迫感が
非常にリアルに感じられる。


朝の情報番組「グッドモーニングショー」のメインキャスター
『澄田真吾(中井貴一)』はスタジオ入りする前の早朝に家族と一悶着。
更には共演する女子アナの『小川圭子(長澤まさみ)』からは
自分達の交際を番組中で公表すると宣言され、最低の一日の幕開け。

更には局の近くのカフェで起きた事件では
猟銃を持ち複数人を人質に立て籠もっている犯人からの要求で
その現場に呼びつけられる最悪の事態に。


そこで『澄田』は、持ち前の喋りを武器に犯人と渡り合うのだが
どうにもここからがいけない。

スタジオ内のあまりのリアルさに比して、外に飛び出してからは
丸っきりのオハナシ。

彼にとって都合の良い出来事が次々に出来し、
まぁそうしないとハナシが転がって行かないのは理解できるけど
ちょっと開いた口が塞がらない。

特に現場を仕切る警察の描写は、普通こんなコト許さんだろうとの
現実感が皆無の状態。


オマケに犯人である『西谷颯太(濱田岳)』の動機がどうにも弱く
こんな些細なことで、大それた事件は起こさないだろうにと
全く感情移入できない致命的な瑕疵。

それでも何とか納得できる作品に仕上がっているのは
前半部の緻密な描写があるからで、やはり実体験に基づいたエピソードの積み重ねの功は大きい。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


或いはやはり主要な登場人物である『石山聡(時任三郎)』を意識した
楽屋落ち的な科白もあり、その面でも楽しませてくれる。

元々演技が巧く安定感のある『長澤まさみ』は
真田丸〕同様、空気の読めない女を好演し素晴らしい。

そして出番は少ないものの『澄田』の妻を演じる『吉田羊』が滅法良くて
表情だけで時々の感情を雄弁に語る地力を見せる。

キャスティングの妙も、成功の一要因に挙げられるかも。


監督お得意の権力との対立項は、
テレビ局内では報道が一段高く、バラエティーが格下に見られている挿話により
本作でも健在。

そしてこれは受け取り方かもしれないが
「CX」の長期低落傾向を揶揄するようなシーンも幾つかある。

申し訳ないコトだけど、かなり嗤えてしまった。