RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

栄光のランナー 1936ベルリン@TOHOシネマズシャンテ 2016年8月28日(日)

封切り三週目。

席数190の【CHANTER-3】の入りは五割ほど。


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原題の〔RACE〕、鑑賞前は
文字通り主人公の『ジェシー・オーエンス』による「競走」のことだと思っていたんだけど、
観終わってから、ああ「人種」の意味も兼ねていたんだと、改めて納得する。

それほど本作では人種差別的な描写が頻出する。


もっとも、『オーエンス』の母国アメリカにしたところで、
直近の作品で言えば〔グローリー/明日への行進〕で描かれる様に
本作から三十年経過した時点でも、
黒人に対する激しい差別の状況は変わっていない。

自国のコトは棚に上げ、相手国の人権対応については
あれこれ注文を付ける身勝手さは十分に描かれており
胸がすく一方で、嫌悪感も込み上げて来る。


しかし、そういった偏見も
圧倒的な速さや力強さ、そして美しさの前では、特に大衆は
素直に頭を垂れる。

それは〔オリンピア〕を撮った『リーフェンシュタール』とて同じこと。

彼女には肌の色など眼中に無く、
今だからこその、対象の印象的な姿をフィルムで捉え
後生に残すことこそが使命との信念で邁進する。
差別の欠片もそこには無い。


他方、頑迷とも言える行動を取る『ヒトラー』の態度は
聞き分けの無い幼児のよう。

或いは顔色伺いの『ゲッベルス』については
真の価値が理解できない、
極めて肝の小さい人物として表現される。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


アスリートとしての『ジェシー・オーエンス』の偉大さも
存分に味わえる
スポーツ作品の体を取りながら、
もう一つのテーマを持たせたことで
極めて社会的な示唆に満ちた一作となった。