RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

日本で一番悪い奴ら@109シネマズ川崎 2016年7月2日(土)

封切り八日目。

席数72の【シアター10】の入りは満員の盛況。


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先ず冒頭、実際の出来事を基にした映画であることが示されるが
あくまでも「フィクション」なのだとの念押しがある。

エンドクレジットでも、当たり前だけど
警察機構の支援は一切無いし、
ロケ地さえ、舞台である札幌よりも
他の場所が多く使用されていることが判る。

組織にとっても、地域にとっても
著しく不名誉なコトを描いた作品なわけだし、
ギリギリの表現をするためのエクスキューズでもあるのだろう。


「権力は腐敗する」とは
『ジョン・アクトン』の有名な格言だけど、
本作の登場人物達は、まさにそれを地で行ってしまう。

此処で、タイトルが「奴ら」と
単数でない意味が理解される。

これらはあくまでも集団としての不祥事なのだ。


強い正義感を持ち北海道警の刑事になった
『諸星要一(綾野剛)』は、持ち前の生真面目さから
なかなか成果を上げられずにいる。

警察内の点数主義に馴染めないのだが、
そんな折、先輩刑事からポイント上げる為には
清濁併せ飲むことの重要性を教わり、
裏社会と積極的に関わりを持つようになる。

純粋だった『諸星』は激しく変容して行く。


カメラが上空にパンして、
地上に戻った時に年数が経過している手法は
〔1900年〕で観たのが最初だと思うけど
此処でも効果的に使用されている。

外見からしての主人公のあまりな変わりぶりに
開いた口が塞がらない。

肩をいからせながら街を闊歩する
危ない御兄さん達と全然変わらない。


個人での非法が次第に組織全体へと蔓延して行く様は、
まったき前例主義のエスカレーション。

拳銃の摘発量も前回よりは今回
更にはその先と、きりがなく増大し、
横流しをする麻薬にしても
昨年の摘発量が○○㎏だったから、その枠内なら良いだろう、などと
傍からすれば噴飯ものも、当の本人達は大真面目なわけで
このあたりの意識の乖離がホントに恐ろしい。


目的と手段がごちゃ混ぜになり、
いったい何の為に職務を履行しているのか、
公共の利益はなおざりになり
組織の拡大だけが目的化して行く。


見逃したり、泳がせたり、取り引きしたりと、
アメリカの警察機構の専売特許である
庶民にとっては非合法にしか見えない捜査法も
内部では多用されていることも驚きだったし。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


新宿スワン〕でもそうだったように
主演の『綾野剛』の演技が凄すぎる。

それ以前にも脇役としては多くの出演作があるが
一般に知られるようになったのは2012年の〔カーネーション〕だろう。

その時の端正な役柄を意図的に毀して行くような
そこのみにて光輝く〕であり〔ピース オブ ケイク〕。

役者とはこ~ゆ~モノとの見本となる王道。
それでこそ表現者である。