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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

スキャナー 記憶のカケラをよむ男@109シネマズ川崎 2016年5月1日(日)

封切り三日目。

席数89の【シアター9】は満員の盛況。


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監督が〔宇能鴻一郎の濡れて打つ〕の『金子修介』、
おまけに脚本が〔キサラギ〕〔探偵はBARにいる〕の『古沢良太』。
観に行くでしょ、フツーこの面子なら。

しかし、観終わって少々嘆息。
それは脚本・演出の両面で。
こ~ゆ~こともあるんだなぁ。


モノに触れることでそこに残ったヒトの記憶を読み取る設定は
当然のことながら新しいものではない。
過去の良作としては〔サイコメトラーEIJI〕あたり。

ただ、加えて本作の主人公は、その場に残された粒子からも
人の思念を辿ることができる。

この二つを兼ね備えているのは、どんな人物か。
実はその造形が全編を貫く問題点の源泉なっている。


本来は途轍も無く悲しい男の物語なのだ。

他人の考えていることが
好むと好まざるとにかかわらず一方的に頭の中に流れ込んで来る。
そこには知りたくないことも含まれているだろう、裏の無い人間なんていやしない。

次第に、それが自分の記憶なのか、それとも人の経験を
追体験しているだけなのかも判然としなくなる。

なので『仙石(野村萬斎)』が世捨て人同然の暮しを送っているのは
激しく同意できてしまう。

ヒーロー的な能力だけでなく、負の側面にもきっちり焦点を当てている、
その点は評価できる。


しかし、その性格付けがイマイチ。
あまりにも弱っちい。

些細なことでおろおろとし、
それが相棒の『丸山(宮迫博之)』の正反対の態度とも相俟って、
ギャグなのかシリアスなのか曖昧な描写が続出。

此処は笑うトコじゃないでしょ、という場面でも
(特定の来場者ではあるが)笑いが起きてしまい著しく興を削ぐ。


ただ筋立ては比較的良く出来ている。
観客の側に開陳されない事実も幾つかあるけれど許容範囲。
ひねりも効いており意表を突く結末。

また基本、人のコトを信じられなくなっている『仙石』が
再び暖かいココロを取り戻す一連のエピソードは、
こちらの心もほっとする。

しかし先に挙げたような演出の齟齬があるので
台無しになってしまうんだな。


評価は、☆五点満点で☆☆☆。


今回の興行成績次第では続編の可能性もありだろうけど、
ハナから主人公の造り込みに失敗している。

蒔き直しをしないと辛いんじゃないか。