RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

獣は月夜に夢を見る@チネチッタ川崎 2016年4月23日(土)

封切り八日目。

席数138の【CINE 3】の入りは三割ほど。

ちなみに「R15+」指定なので
客層は高齢。


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日本に於ける「狐憑き」は
(地域社会での)富みの偏在による貧富の差が起きた時に
それをなくそうとする社会的装置と『京極夏彦』は言っていたけど、
本作の舞台は現在の北欧の鄙びた町。
多くの住人が海からもたらされる幸に頼って暮らしている。

その海辺の町に住む少女のカラダに
今、禍々しい異変が起きようとしている。
それにはどうやら「血」が絡んでいるよう。


導入部からして謎めき、不穏な要素を孕んでいる。

母親は病気で車椅子での生活。
しかし、その原因が何なのか
主人公の『マリー(ソニア・ズー)』には判らない。

父親と掛り付けの主治医は、それに触れることを避けている。
また、町の人々のうち幾人かは、『マリー』の一家に
特別な視線を向ける。

それらは全て、病気の母親が関係しているようだが・・・・。


そして例によって、予告編からしてかなりのネタバレになってしまっている。

過去に遡って行く過程がサスペンスであるにもかかわらず、
重要な要素の一つが開陳されちゃってるんだもん、著しく興味を削がれる。
もっと上手く作ろうよ。


それでも、全体を覆う静謐なトーンは素晴らしい。
北の街であるから、暗く寂しささえ感じさせるけど
それが却って少女の行く末を暗示しているようにも取れる。

一方で、抗う術の無い運命に翻弄される悲しみや
受け入れられない変化に立ち向かう楯となる愛情については
どうにも掘り下げが浅く、消化不良な印象を受ける。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


ぼくのエリ 200歳の少女/モールス〕と比較する向きもあるけど
絶対的な自己犠牲の表現がやや欠けている気がする。

もっと尺を長くして、背景を説明するシーンを盛り込んでも良かったのに。