RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

マジカル・ガール@109シネマズ川崎 2016年3月19日(土)

本日初日。

席数121の【シアター3】の入りは七割ほど。

正直、これほど入っているとは思わなかった。
何となれば、入手したチラシでのヘッド館は
【ヒューマントラスト】や【恵比寿】等の
所謂アート系。

本館での告知も唐突だったし、
上映回数も一日二回だけ。

でも国内の批評家達の評論は滅法良い。
加えて「IMDb」でも人数は少ないものの
7.2の好評価。

そうでなければ来なかったし、
多くの人が同様の理由と思われる。


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自分の娘が余命いくばくもないと判れば、
ましてや幼いままであれば、親としてはその前に
できるだけのコトをしてあげたいと
当然の様に思うだろう。

本編の一方の主人公『ルイス』にしても同様。
白血病の娘が大好きな日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の
一点モノのドレスを入手しようと奔走する。

しかし分を越えた高望みが、
周囲の人々を巻き込む不幸へと連鎖して行く。

その筋に多少の無理っぽさは散見されるけど
これだけ畳掛けられる様に流されると
納得してしまう迫力がある。

最初いた場所からは、あまりにも捻った処に
放り出されてしまうような不安感。


もう一方の主人公に、精神に闇を抱えた『バルバラ』が居る。
彼女は思わぬことで『ルイス』に関わったことから
堕ちる様に巻き込まれて行く。

彼女は、実は多くの人を破綻に導く
ファムファタル」であることも同時に示される。


オープニングで提示される二つの短いエピソードが
物語の最後で効いて来る。

『カルロス・ベルムト 』監督の脚本の冴え。


倒叙の箇所が幾つかと、実際は同時に進行しているにも拘らず、
何の説明も無くさらっと描写されているシークエンスがあるので
その整理にちょっとだけ意識を使うけど
判り易い語り口にも好感が持てる。

そして全てが終った時、
実は直訳の「マジカル・ガール」には
複数の掛け言葉が内包されていることを観客は理解する。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


本編の登場人物は、何れもが痛々しい。

魔法少女ユキコ」に憧れる『アリシア』に到っては
外見からしてそう。


しかし、それを一番に感じるのは
元数学教師である『ダミアン』が、あることの為に装う場面で、
これは最早、イタさの極致。

制作された本国であれば、多分大爆笑が起こるのではないだろうか。
勿論、本邦では、観客は息をつめて見つめるのみ。