RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ヘイトフル・エイト@109シネマズ二子玉川 2016年2月28日(日)

封切り二日目。

席数156の【シアター10】は満員の盛況。

販売初日にNet予約した時は
どの席も選び放題だったのに、
これはどうしたことだろう。


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タランティーノ』八作目の監督作品だから
タイトルを含め「8」が随分と強調されている。

でも本数ベースでは「9」じゃないか。
キル・ビル〕は〔Vol.1+2〕で一本ってことか。


それ以外にも、70mmの作品を観るのなんて
随分と久し振り。

超横長の画面を一杯に使って表現されるので、
視線を右に左に動かすのが忙しい。

パンフォーカスの多用も含め
随分と目が酷使される。

やはりこういったフォーマットは大劇場でないとな。
正直『ミラノ』や『コマ』で観たかった。


加えて過剰なほどの科白の嵐。
人間関係を含め、キャッチアップするのにかなり難渋する。


そして「マカロニウエスタン」への限りなき偏愛。

作曲に『エンニオ・モリコーネ』を起用したのが象徴的。

また黒人ガンマンという特異な存在を主役に据え、
随分と人種差別的な科白を撒き散らすのもお手の物。

これも舞台が「南北戦争」後の西部だから許されるんだろうか。


ワイオミング州の山中、
八人の男女が「ミニーの宝飾店」に吹雪のため閉じ込められる。

そこで次々と人が殺されて行くんだが、
まあその描写がひどいひどい(誉め言葉です、念の為)。

「R18+」に指定されたのもむべなるかな。
しかも、その殺し方がまた凄い。

戦争や災害モノ以外で多くの人が亡くなるのは
中川信夫』の〔地獄〕というとんでもない作品があったけど、
それに匹敵する衝撃だった。


前宣伝の惹句だけを見ると
そして誰もいなくなった〕に類似したミステリーかとも思えるが
然にあらず。

確かに思わせぶりなシーンや科白は多々積み重なって行くけれど、
これで全体が俯瞰でき、ましてや結末が想定できるかなんて
とってもムリ。

タランティーノ』の気ままなお遊びに三時間の長尺をつき合わされ、
掌で転がされることを法悦と感じるくらいでないと
とっても耐え切れないと思う。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


ではあるものの、語り口はこなれているし、
真相が判った後に反芻すれば
伏線の張り方も見事。

登場人物しか知りえず、観客の側に開陳されない手掛かりも多いけど、
全体を楽しむ上では、それもまた許容範囲。

優れたエンターテイメントの一作として
アカデミー賞」ノミネートも頷ける。