RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ディーパンの闘い@TOHOシネマズシャンテ 2016年2月14日(日)

封切り三日目。

席数224の【CHANTER-1】は満員の盛況。

客層はやはり高齢者の
それも男性に振れている。


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何がしかの事情により
家族関係を偽装するとのプロットは
随分と手垢のついたものと思っていたけど、
切り口によっては、まだまだ料理のしがいのある素材と
再認識した。


スリランカの反政府組織で戦い、しかし
実の妻と子供を失ってしまった男は
内戦の終結と共に『ディーパン』と名を変え、更には
見ず知らずの女性達を妻や娘と偽り
難民として欧州に渡る。

しかし、そこで彼を待っていたのは
安住とは程遠い暮らし。


フランスでは移民の割合が一割を超え、
独自のコミュニティを構築、
犯罪も多発し、元々の国民との軋轢も発生する。

『ディーパン』もそのような抗争に心ならずも巻き込まれる。
或いは終結したはずの内戦の影が何処までも追いかけて来る。


一方、最初は赤の他人であったはずの女性と子供との繋がりが
次第に家族的な要素を帯びて来る。

ここいら辺、家族の本質って何さ、との命題もあるのだが、
感情をぶつけ合うことで、その絆が次第に強くなって行くのは
何とも皮肉に見える。

要は環境が彼らを結びつくように仕向けている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


それにしても、後味の悪い幕切れだ。
難民や移民の問題は特に欧州に於いては普遍的。

国によっても対応に差があるわけで、
一家族の懸案が(結果はともあれ)収斂したといっても、
それはほんの一部にしか過ぎず
本質が解決されたわけではけしてない。


そしてもう一つ、この日本語のタイトルや
宣伝の惹句に魅かれた人も多いんだろうな。
そういった客にとっては、肩透かしかもしれない。

実態は一人の男が、或いは女性や子供が
幾つかのくびきから解き放たれる
人間ドラマの要素が濃い作品なのだから。