RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ブラック・スキャンダル@TOHOシネマズ日本橋 2016年2月1日(月)

封切り三日目。

席数213の【SCREEN6】の入りは四割ほど。


イメージ 1



まったくアメリカって国は・・・・、と
半分驚きの入り混じった嘆息をする。

主な理由は二つ。


本作も最近流行の
「真実を下敷きにした」モノ。

でも、他のそれのように、冒頭に麗々しく掲げられはせず、
エンドタイトルの最後の最後に、申し訳程度に挿入されるだけ。

一連の出来事は、ほんの三十年前。
多くの主要な登場人物は存命で、
何人かは収監中、何人かは釈放されている。

なのに、本名で容姿も酷似させ、
満天下に晒しちゃうってアリなのか。
日頃「PC」とかって口煩く言うくせに。

犯罪作品だからイイのか。
それとも全員の了解を得ているのか。


二つ目は、社会の根深い腐敗。

幾ら幼馴染とはいえ、
取り締まる側とされる側が、こんなカタチで癒着するなんて。

それも、個人レベルの狭い関係にとどまらず、
組織のかなりの部分が汚染されている。

地縁・血縁の強い田舎ならいざ知らず(いや、勿論
田舎でも良くないんだけど)、人口だって上から数えたほうが早い
大都市なんだから。

でも『カポネ』が跋扈した街がここだったとを
あらためて思い出す。
そういった下地は有るのかもしれない。
片や〔スカーフェイス〕は対決のオハナシだったけどな。


主役の三人は、作中では描かれることがないけれど
実際は仲の良い悪ガキだったのだろう。

それが長じて、ギャングのボスとなり、
FBIの捜査官となり、州選出の上院議員となる。

その中では
議員である『ウィリアム(ベネディクト・カンバーバッチ)』の役割はやや薄め、
FBIの『ジョン・コノリー(ジョエル・エドガートン)』と
ギャングの『ジェームズ・バルジャー(ジョニー・デップ)』の関係性が主軸となり語られる。

それにしても、だ。
本作での『ジョニー・デップ』は素晴らしい怪演。
直近の〔チャーリー・モルデカイ〕のダメさ加減を、軽く吹っ飛ばしてしまう。

何れもがエキセントリックな役柄ではあるけれど、
こちらの方が遥かに本領発揮だ。

嘗て『中村梅之助』が〔花神〕で『大村益次郎』を演じた時に
その特異な容貌を再現するのに、
鬘の下に脱脂綿を大量に入れ、額を広く見せる工夫をしたと聞くが、
恐らく似たようなことを、ここでもやっているんだろう。

カタチから入り、酷薄な、やや常軌を逸した性格を
余すところなく描き出す。

それは見ていて背筋がぞっとするほど。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


あ、あと一つ。
民族間の対立も、もう一つの重要な要素。

アイリッシュ系とイタリー系、
更には「IRA」までもが絡み、
なんて根深いんだろう。