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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

の・ようなもの の ようなもの@チネチッタ川崎 2016年1月23日(土)

封切り八日目。

席数129の【CINE2】の入りは八割ほどと盛況。

客層はやや高齢に振れており、
やはり前作を体験している人が多い印象。


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あの、〔の・ようなもの〕の後日譚。
35年後のいまいまを描く。

前作は『森田』監督のメジャーデビュー作。

色々なものになり切れていない
「の・ようなもの」を描く秀作。

わけても、『伊藤克信』の抜擢が一番の手柄。
その下手さ加減は、地なのか演技なのかも判然とせず、
年齢的にも等身大を演じ、中でも〔黄金餅〕を底本にした
「道中づけ」のシークエンスは圧巻。
この一席が、傑作に押し上げた、と言っても過言ではない。

その後も〔キャバレー日記〕を初めとし、
多くの「森田作品」に出演しているし。


翻って、本作。
其処彼処に『森田芳光』の幻影を見る。

本歌の影を引きずっているのは勿論、
同監督の幾つかの作品からのコラージューかと思うくらい
過去の映画の記憶が充満している。

オマージュとしての意味合いだろうけど、
それが却って本作を、「なり切れていないもの」、
所謂「森田作品」の「ようなもの」に留まる出来にしてしまっている。

要は制作者サイドのマスターベーションに近い印象。

亡くなった監督の、
彼であればこう造ったであろう、
との想いに囚われすぎているんじゃないか。

また、参る墓には「森田家」の銘が刻まれているけど、
楽屋落ちにもなりゃしない。


代表的な例を挙げれば、『志ん魚』が語る場面。

此処での兄弟子たちの科白は
「こりゃ~・・・・」だけで十分。

客層を考えれば、基本、前作での予習・復習はできているわけだから、
懇切丁寧に説明する必要は、全然ない。

まったきを期しすぎて、余韻さえも残せない造りになってしまった。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


これも前作の流れだろうか、
カメオ出演に近いカタチで、当代の多くの役者が出演している。

そして『伊藤克信』。
35年経っても全然変わらない。それが一番嬉しい。