RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ブリッジ・オブ・スパイ@109シネマズ二子玉川 2016年1月10日(日)

封切り三日目。

席数134の【シアター6】は満員の盛況。


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一度囚われてしまったら、命を捨てる覚悟が
スパイとしてあり方なんだろうか。

では国家は、どういったカタチで
その気概に報いるのか。


十年も前に、イラクで邦人が人質となった事件。
巧妙なプロパガンダで自己責任論がマスコミを賑わした。
じゃあ、国の役割ってなんなんだろ。

本作でも、政府の本音と建前が、随所に見え隠れする。
特に、アメリカ国内で。

公正の国であることを知らしめるため、
裁判を開き弁護士も選任する。しかし、
そこでは本当の意味での正義は求められていない。

たぶんに過剰な描写とも思えるが、
主人公だけが信義に基づき公正に行動し、
先の先を冷徹に見て判断している。


そしてまた現代でも
凶悪事件を担当した弁護士は匿名的な市井民から
言われない迫害を受ける。
加えた側は、自分の側に正義があると誤認している。

何時の時代でも、国が違っても
普遍的な世の習いではある。

イマイマの日本に置き換えても
なんら違和感を感じないエピソードであることよ。


しかし最も怖いと思ったのは、
筋の主体とはあまり関係の無い、何気ないシーン。

『ジェームズ・ドノバン』が列車の中から
ベルリンの壁」を越え、
西側に亡命しようとした人達が狙撃されるのを目撃する。

本国に戻った彼は、やはり電車の中から
少年たちが金網の柵を越え、
家の庭から庭へと自由気ままに移動するのを見る。

同じ動作に対する、あまりにも対照的な描写。

しかし、これを現在のアメリカでやったら
若者達は無事でいられるのか?


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


取り留めのない書きっぷりになってしまった。

最近流行の、埋もれてしまった、または
忘れられてしまった史実に、再度を光を当て
評価する作品の中では、
スピルバーグ』の手腕が一頭抜けている。

本人の出自も勿論あるだろうけど、
単純な英雄譚とはせずに、各所各所に見られる
権力やポピュリズムに対しての皮相な眼差しが、
よりそう思わせるのかもしれない。