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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

FOUJITA フジタ@チネチッタ川崎 2015年11月23日(月)

封切り三日目。

席数244の【CINE 6】の入りは八割ほど。

当初、標題館での上映予定はなく、
急遽の封切りが決まった為か、
一般受けしそうもない題材の割りには
まずまずの盛況。


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『フジタ』については、人並み以上に作品も観ているし、
その経歴も理解していると思っている。

そんな自分から見ても、本作の不親切な造りには辟易するし
あってないような、ぼんやりとしたストーリーには
疑問を感じる。

一体、監督は『フジタ』の何を描きたかったのか。


特に彼の周囲を彩る女性達との関わりについて、
それの簡略さは顕著。
過去の妻達、或いはモデルの名前が何の脈絡も無く発せられ、
誰のどのようなことについて言及しているのかも判然とせず
想起すらできない。

他の登場人物との関係性もそれは同様。
疎開先で「宮本くん」と声を掛ける相手は
宮本三郎』と思われるが、唐突感は否めないし、
このシーンが全体の中でどのように機能するのかすら理解不能


物語りは『フジタ』がパリで功成り名遂げ、
戦中日本に帰国し、以降終戦までの所謂全盛期が描かれる。

不遇な時代については、彼の言葉で、若しくは
ほんの些細なシーンの挿入で言及されるのみ。
いっそのこと、ばっさり切ってしまった方がすっきりとする。

作品の産みの苦しみや、描くことへの葛藤すら
そこには無く、あくまでも恬淡として時間だけが過ぎて行く。


画面は確かに、静謐で美しい。
あまりに静か過ぎて、正直何度か 落ち そうになった。
ここ暫くでは珍しいことだけど、それ程刺激に乏しく、
何事が起きるわけでもなく、平板な描写。

昨今では「小栗美学」などとも言われているようだが、
美学の先人『鈴木清順』がそう称えられての良作は
ツィゴイネルワイゼン〕と〔陽炎座〕の二つだけではなかったか。



評価は、☆五点満点で☆☆。


1981年に〔泥の河〕で監督デビューして以来、
三十五年間に本作を含め六本しか作品を発表してこなかった『小栗』監督。

その間、どうやって生計を立てていたんだろうかと
他人事ながら気にはなっていたが、こんなものを撮るようでは
やはり映像に凝り、ストーリーテリングがダメダメになってしまった
直近の『テレンス・マリック』と同じ轍を踏むんじゃないか。