RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ヒトラー暗殺、13分の誤算@チネチッタ川崎 2015年10月23日(金)

封切り八日目。

席数488の【CINE 12】の入りは五割ほど。


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かなり不親切な造りの一本と見た。
特に日本人にとっては。

ヒトラー』やナチス政権について該博な知識がないと
物語の背景は十分に理解できないだろう。
例えば、総統たるものが、なんで
ビヤホールなんかで演説会を開くのか、とか。

加えて、語り口自体も、かなり省略が多い。
なので、観客の側は、その間を想像力で埋めながら鑑賞する必要もある。
それは、冒頭、十三分早く演説を切り上げる
契機になったメモを提示される場面にも顕著。

まぁ、地理的背景も含めて胡乱な知識しかないからね
(自分も含めて)、当たり前だけど。


ヒトラー』の暗殺自体は数十回にわたり計画・実行されたとされているが、
何れも失敗に終わっている
(ちなみに、映画化された「ヴァルキューレ」についても
本作では触れているんだが・・・・。
これも判り難いなぁ)。

何と言う、悪運の強さだろう。


本人自身の警戒感により、個人が暗殺を行動に起こすのは
不可能に近かったのではないか。
多くは周辺の組織だった挙動であった様だし。

そんな中で、本作の主人公である『ゲオルク・エルザー』は
単身で立ち向かう。

民衆の支持を受け、政権の座に昇りつめた『ヒトラー』としては、
その大衆が刃向かうのはあり得ないことだろうし、
背後に居る黒幕を執拗に詮索する姿勢及び、
その後の『エルザー』が辿る数奇な運命も含め、
理解できる下地になっている。


多分、独逸語では「フライハイト」だと思うけど
「自由」を求め、それを阻害する「ナチス」に対して疑問を持ち、
暗殺を決意するに至るまでに彼が目にする一連の蛮行の数々は
今の目からすれば相当に理不尽。

しかし、当時は、多くの人達が
流されるように迎合して行ったのだろう。

義憤に駆られ、行動を起こした『エルザー』の視点は
当然共感できる描写になってはいる。

が、現在、似た様なコトが一掃されているかと言えば
首を傾げざるを得ない、勿論、日本に置いても。
なので、異なる意味で、ちょっと背筋が寒くなってしまった。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


監督の『オリヴァー・ヒルシュビーゲル』にとっては
ヒトラー 最期の12日間〕以来、十年振りの
同一のテーマ。

ただ、視点が正反対であり
表裏を成す関係性のようなものが
浮かび上がって来る気がする。