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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

アデライン、100年目の恋@チネチッタ川崎 2015年10月23日(金)

封切り七日目。

席数532の【CINE 8】の入りは二割ほど。


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大まかには、オトナのお伽噺であるし、
ボーイミーツガールの骨法をしっかりと踏まえているけれど、
装飾を複雑化することで、
物語に深みを与え、作品自体の出来はかなりのもの。


ある出来事がきっかけで年齢の進行が止まってしまう
(しかし、この場合は所謂「不死身」ではない)、のは
良くあるプロット。

馴染みの例では『高橋留美子』の〔人魚シリーズ〕か。

外見が何十年も変わらないことで周囲の好奇の目にさらされ、
果ては国家に目を付けられることも含め
怪しまれてしまう。

なので一つ所に定住することができず、
名前も、外見も、住む場所も
定期的に変えて行く。


オープニングの、
何故そのようなカラダになってしまったのか、を
語る場面の仕掛けからして秀逸。

これで一気に鑑賞者は、物語り世界に引き込まれてしまう。

そして、過去の場面をカットバックで繋ぎながら、
恋することを諦め、くすんだ生活をおくっていた『アデライン』が、
再び、人を愛することの気持ちを思い出すまでを
テンポ良く描いて行く。


そんな中でも一定の暮しを維持できるのは
本作の主人公が先を見通す目を持っていたからで、
その間の事情は、かなりさらりとではあるが
描き込まれてはいる。

しかし、百年を超えて、
加えて若い脳のまま生きている人間の知識たるや
どれほどのものか。

作中では幾つかのエピソードも示されるが
けして嫌味にはなっていない。


また素晴らしいのが、彼女の部屋の中の調度品。

入手した時点では、そんな価格ではなかったろうが、
数十年を経たイマイマでは、立派に資産として、
アートとしての価値も持つ。

着ている服とも合わせて、
この百年紀のクロニクルを見る思いもある。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


些細なことが、実は重要な意味を持つ(観客に向けての)メッセージであることは
ラストのシーンまで徹底されており、どこまでも小気味よく、
そして爽やかな後味を残す良作。