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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

アメリカン・ドリーマー 理想の代償@TOHOシネマズシャンテ 2015年10月14日(水)

封切り二週目。
席数224の【CHANTER-1】の入りは半分ほど。


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なんでこんな作品を日本に持ってきたんだろうと
観ている中途から、正直かなり頭が痛くなって来た。

アメリカの司法制度や選挙制度を十分に理解していないと、
本作のホントの意味での堪能はできないのではないか。

それは最後のシーンに象徴的。
主人公が変わって行くコトを決意する場面に端的にあらわれる。

勿論〔レイダース〕のシリーズだって、
昔のアメコミに触れていない日本人にとっては、
彼等が楽しんでいる何%を満喫しているかは疑問。
しかし、方や冒険活劇であり、
こちらは社会派ドラマな訳だから。


ストーリーの流れはこんな具合。

80年代初頭。
ニューヨークで石油卸し業を営む『アベルオスカー・アイザック)』は
ギャングの娘『アナ(ジェシカ・チャステイン)』を娶りながらも、
それに頼ることをせず
実直を旨に商売を拡大して来た。

しかし、当然、その成功を妬むモノは多々おり、
同業者は勿論、他の勢力からも様々な妨害を受ける。


顕著な例は、
石油をタンクローリーごと強奪される事件が彼の会社に限って頻発し、
警察はさほど熱心に捜査をしているようには見えないこと。

あまつさえ、正直で裏の無い商売を心がけ、
各種の協力を惜しまなかった彼に
検事当局は複数の罪状で告発の予定があるという。
所謂、スケープゴート

直近で大規模な投資の手付けを打ち、
財務的に逼迫しているのに、この状況は四面楚歌。

どうやって打開して行くのか、がサスペンスの柱。


武装した強奪者のために、
許可を得てない拳銃で自己防衛することが罪に問われ
ひいては雇用主の社会的信用にまで波及する流れは
彼の国が孕んでいる矛盾を、かなり端的に描いてはいる。

そしてエンドロールに流れる
「自分にとってのアメリカ」を歌う一曲は
なんと皮肉に満ちて聞こえることか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


先にも挙げたラストシーンは、
けして快哉を叫ぶシークエンスではない。

寧ろ、正直者が馬鹿を見る、
そして司直でさえ黒く染まっていることに
暗澹とする場面に他ならない。