RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ぼくらの家路@チネチッタ川崎 2015年9月23日(火)

封切り五日目。

席数284の【CINE 5】の入りは八割ほど。
「PG12」の設定故か、その重ための内容故か
客層はかなり高齢に振れている。


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夜更けのベルリンの街を、
幼い二人の兄弟が母を探して彷徨う。

兄の名前は『ジャック』。
本編の主人公であり、且つ本作の原題でもある。

日頃からネグレクト気味の母親の代わりに
四つ年下の弟の面倒を何くれと看るだけでなく
簡単な家事までこなす。
まさに、家貧しくして孝子出ず、を
地で行っている。


しかし、彼とて僅か十歳の子供。
母親を恋しく思い、預けられていた施設から逃げ出し、
弟を連れ行方の知れない母親を尋ねて回る。

ここで、自分達だけで生きて行かなくはならない子供の論理と、
大人の社会規範が衝突する。

そりゃそうだ、不法侵入やら無賃乗車やら
窃盗に万引きと、殆どの軽犯罪に手を染めている。

しかし作者の側は、是とも否とも、ましてや
ヒロイックにも描かず、冷めた目で見つめるだけ。


そのスタンスは母親を描く視線にも共通している。

何時までも夢見る少女のように、
その内に白馬の王子様と巡りあえることを本気で信じている。

先ずは自分の享楽があり、子供達のコトは猫っ可愛がりはするものの
それが本当の愛情なのかは心許ない。
単に肌の温もりを求めているだけのようにも見える。

しかし、彼女の言動をもまた、否定も肯定もするわけではない。
このような人間も世の中には居るのだ、程度の
透徹した眼差しだ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


最後に『ジャック』は
自身の少年時代に決別を告げる
ある選択をする。

それは僅か三日間の内に起こってしまい、
再び元には戻れない
自らの感情の変化による。

本来なら緩やかに推移してしかるべきなのに
殆ど強制的に近い変動は
観客の心にも深い爪痕を残してしまう。

何故なら、どちらに転んでも
『ジャック』にとっては心地良い結果をもたらさないことが
事前にちゃんと提示されているんだから。