RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

予告犯@TOHOシネマズ錦糸町 2015年6月14日(日)

封切り二週目。

席数172の【SCREEN1】の入りは満員の盛況。


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観終わって直ぐの感想と、
その後暫く反芻した後の想いが
変って来る映画が時としてある。
本作はどうやらその部類。


冒頭、新聞紙をマスクの様に被った異形の人物が
「俺が世界を変えてやる」と大上段に振りかぶった決意表明をする。

しかし(予告編で見た程度の出来事では)そんなことでは
世界は変わらんだろうと、こちらは思う。

実際にこの騒動を起こしている人物達の素性は
かなり早い時点で明らかにされる。

なので、物語の焦点は、
今後どんなコトをするのか、と
何のためにしているのか、に絞られるのだが、
後者の方も、中盤に差し掛かる前に見当が付いてしまう。


興味の大部分は削がれてしまったはずなのに、
しかも間抜けな官憲と賢く立ち回る犯罪者達と言う
ステレオタイプな流れなのに、
妙にヒトを引き付ける魅力がある。


話中では幾つかの、イマイマの日本のやりきれない状況が描写される。

それはブラック企業とその中での理不尽なヒエラルキー
そして、一度沈んでしまったら、再び浮かび上がることが不可能に近い
格差社会

日本のジニ係数は年々上昇傾向にあるし、
OECD 34か国の中でも四番目に高いと言われる
実態は歪な世界。

先の「世界」がこの意味であれば
肯んぜるものは確かに有る、ただね・・・・。


次第にエスカレーションして行く
その予告ではあるけれど、食品会社の工場に放火する件は
それによって多くの失業者を更に生む可能性がある訳で、
彼等の趣旨とは乖離する不自然なエピソードにも思える。

ストーリーテリングのぎこちなさや省略も相俟って、
制作者サイドの練り込み不足も感じたりする。

まぁ、「WOWOW」ドラマとのメディアミックスもある前提だから
仕方ないのかもしれないけど。


時間が経過してからの
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


「小さなことでも、それが誰かのためになるなら人は動く」という
主要な登場人物ではない人間から発せられる印象的な言葉があり、
これこそが、本作に通底するテーマであることが、
実は人と人との繋がりのオハナシであることが、
次第にじんわりと効いて来るのだ。